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タカシが産後クライシスにおちいった理由《前編》 〜マダム・リリーのお悩み相談サロン【Case.2】〜

緑のあるポストと壁

ようこそ、マダム・リリーへ


とある閑静な住宅街の一角に、ひっそりとたたずむ小さな洋館。
木々にかこまれたその建物には、さまざまな悩みを抱えた人たちが、次から次へと訪れます。

『マダム・リリー』
この洋館でサロンを営む女主人を、彼らはみなそう呼びます。

本名、年齢、経歴不詳。
どんな悩みに対しても、「私も経験あるわ」が口癖で、普通は言いにくいようなことでも、サラッと一刀両断するのがマダム流。

解決できるかわからないけれど、そんなマダム・リリーの話を聞きに、悩みを抱える人々が昼夜を問わずやってくるのです。

さて、今宵やってきたのは、ヒョロリと細長い背を丸めながら、額に浮かぶ汗をハンカチで拭う男性。
清潔感のある白いYシャツに、オーソドックスなスーツとネクタイ、背中には黒のビジネスリュックを背負う彼。
すこし気弱で、疲れたようにも見える表情でサロンの門をくぐります。

いったい、どんな悩みを抱えているのでしょうか?

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タカシ「あ、どうも。僕、こういう者です」

リリー「あら、ここで名刺渡してくる人もめずらしいわね。ふうん、建設会社の営業マン。まじめに仕事してそうだけど、どんな悩み?」

タカシ「あ、はい。僕には、2つ年上で35歳の妻と、1歳3ヶ月になる娘がいます。妻は、娘が1歳になるころに復職しました。

そのころから、妻が僕にたいしてすごく冷たくなって、いつも機嫌が悪いんです。自分で言うのもなんですが、僕はできる限り育児も家事も手伝っていて、いわゆる育メンだと思います。妻のことも大切にしてるし、娘のこともとても可愛がっているんです。

それなのに、育児や家事を手伝うと、『自分の都合のいいときだけやらないで!』ってどなられて。

でも、仕事で疲れはてて帰って、ちょっとゴロッとしてテレビなんか見ようものなら、『私が1人で全部やってるの、見えない!?』って烈火のごとく怒りだすんですよ。手伝っても何もしなくても怒られるんじゃ、どうすればいいんだって感じじゃないですか。

毎日、家に帰ってもほとんど無視されるかヒステリーにどなられるかで、家がくつろげる場所じゃなくなってしまって。

以前は、料理上手が自慢の妻で、研究も兼ねて週末はふたりでいろいろ食べ歩いたりして、仲良かったんですよ。それが最近は、スーパーのお惣菜が並べてあるだけってことも多くて。

久しぶりに接待があって遅く帰ったら、ふたりともすでに寝てて、やっと家でくつろげたんですよ。それから、同僚と飲みに行ったりして、連日遅く帰るようにしてたんです。

そうしたら、ほとんど口も聞いてくれなくなっちゃって。娘にさわらせてもくれないんです。もう、ほとんど家庭内別居ですよね……」

リリー「ふうん、なるほどね。あなた、気弱そうに見えるわりに、考え方は昔の男なのね。それ、典型的な産後クライシス。このままだと離婚ね。

まあ、でもわかるわよ。私も経験あるわ。いったい何人の夫と、産後クライシスを乗りこえてきたかしら。そのなかで、そのまま離婚した人もいたし、乗りこえて絆を深めた人もいたわ」

タカシ「そんなにたくさん!? 何回ご結婚されたんですか?」

リリー「うふ、それはご想像におまかせするわ。さあて、あなたが産後クライシスにおちいった理由、教えてあげましょうか?」

タカシ「はい、お願いします。マダム・リリー!」

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