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タカシが産後クライシスにおちいった理由《前編》 〜マダム・リリーのお悩み相談サロン【Case.2】〜

マダム・リリーからの助言(1)

リリー「なによりダメなのが、あなたの育児や家事にたいする主体的な意識の低さよ。それが、言葉の端々にあらわれているわ」

タカシ「えっ? 先ほども言ったとおり、僕は育児や家事を積極的に手伝っている育メンですよ。オムツだって大きい方でも替えられるし、早く帰ったときにはお風呂だって入れるし、ご飯を食べさせるのも手伝うし。

疲れて帰ってきても、食べたあとは食器を洗ったり、週末は掃除や洗濯だって手伝います。こんなにやってる父親の方がめずらしいと思うんだけどなぁ」

リリー「はぁ、なにもわかってないわね。さっきからあなた、育児や家事を『手伝う』って言ってることに気づいてる? 『手伝う』ってことは、メインでそれをやるのが奥さんだって暗に言ってることにならないかしら?」

タカシ「ああ、確かに。でも、それはまあ、当然というかなんというか。僕は仕事が忙しいし、妻は今は時短で働いてますからね」

リリー「そう、それよ。よく考えて。子どもができるまで、あなたと奥さんは、時間においてもお給料においても、ほとんど同じくらい働いてたんじゃなくて?」

タカシ「それは、そうですね。妻はもともと同じ部署の同僚でして。今は、時短で働きやすい部署に変わったんですが。子どもが産まれたらそうなるのは当然というか、仕方ないんじゃないでしょうか」

リリー「いいえ、それは思いこみじゃないかしら。そもそも、あなたは子どもが産まれてもこれまでと同じように働くけど、奥さんは育休や時短をとって、育児や家事を奥さんがメインに担当するっていつの間に決まったの? 話し合いもせず、当然のようにそうなったんじゃない?」

タカシ「だって、子どもの方が母親じゃなきゃダメってことが多いし、今後の経済的なことを考えたって、僕がメインで収入を得る方がいいに決まってるでしょう?」

リリー「確かに、今の日本社会の制度ではそういう部分はあるわね。それはあなただけのせいじゃないわ。増えてるとはいえ、実際に、男性が育休や時短を取って、育児や家事をメインにする選択をするのは勇気がいることね。

奥さんの方も、きっとそこまでは望んでないんじゃないかしら。子どもが母親の方をより必要としていることはわかってるし、育児と仕事を上手に両立していきたいと思っているでしょうね。

でもね、時短とはいえ毎日クタクタになるまで働いてるのは、あなたと同じなのよ。それなのに、家を出るまでや帰ってから、絶対にやらなけらばいけないことが山積みなの。毎日それをこなすのが当たり前。そうしなければ、あなたの娘さんは死んでしまうわ。

あなたのように、疲れて帰ったからといって、好きなときにゴロッと転がってテレビを見られるかしら?女性だって、たまには会社帰りに一杯やりたいことだってあるわよ。でも、『今日飲んで帰るからご飯いらない』って、あなたに一言連絡入れるだけで、それをすることができるかしら?」

タカシ「うっ。そう言われてみれば、確かにそうですね……」

リリー「例えば、奥さんは復職するために保活をしたはずよね。その保育園探しや見学、書類をそろえて役所に提出したり、無事に入れるかどうか気をもんだり、あなたはどれだけ参加した? このご時世、保活がどんなに大変かくらい、さすがのあなたでも聞いたことあるでしょう」

タカシ「はい、聞いたことはあるけど、ほとんど妻にまかせっきりでした。確かに、よく認可保育園がどうとか待機児童がどうとかしきりに言ってたけど、僕、よくわかってなくて。正直、妻が仕事に戻りたいために保育園に入れるんだから、それは妻の問題で、僕には関係がないと思ってました……」

『タカシが産後クライシスにおちいった理由《後編》 〜マダム・リリーのお悩み相談サロン【Case.2】〜』へ続く

文:つかまい子

産後クライシスについては、以下の記事でご紹介しています。
恐怖は産後クライシス以外にも。美容クライシスとは?
専門家に聞く、産後クライシスにならないための7つの方法

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