こんにちは、ブロガーの千日太郎です。もしも親から住宅資金の援助を受けられるのなら、住宅資金の贈与税の非課税について知っておくべきです。
親子間であっても、多額の贈与を受けるとお金をもらった人には贈与税がかかります。贈与された収入に対して課税されるんですね。しかし、親などから住宅資金の贈与を受ける場合に限り、一定の額までは課税しないという減税制度があるのです。
この減税措置の目的は、住宅を購入する人に対して親から資金援助された贈与税を非課税にして、住宅市場が冷え込むのを抑えることです。消費税率の10%への増税は2019年10月1日からとなっていますが、消費増税後に家を購入する場合は特にこの非課税の枠が大きくなります。
親から住宅資金を援助してもらえる予定の人は、この贈与税の非課税枠についてしっかり把握しておく必要があります。
贈与税の非課税枠の計算方法
贈与税の具体的な非課税の限度額は下表の金額に基礎控除額110万円を足した金額です。
- 2016年1月~2020年3月までに住宅の売買契約をして、8%の消費税の適用を受けて住宅を購入した人及び個人間売買で中古住宅を購入した人
良質な住宅用家屋 | それ以外の住宅用家屋 |
1200万円 | 700万円 |
- 2019年4月~2020年3月までに住宅の売買契約をした場合で住宅の引渡が2019年10月1日以降で10%の消費税の適用を受けて住宅を購入した人
良質な住宅用家屋 | それ以外の住宅用家屋 |
3000万円 | 2500万円 |
表中の「良質な住宅用家屋」とは次のいずれかを満たすものをいいます。
- 省エネルギー性の高い住宅(断熱等性能等級4又は一次エネルギー消費量等級4)
- 耐震性の高い住宅(耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)2以上又は免振建築物)
- バリアフリー性の高い住宅(高齢者等配慮対策等級3以上)のいずれかの性能を満たす
また、どちらの上限が適用されるかは、消費税が8%か10%かによって違ってくるのですね。そこが少々ややこしいので詳しく解説しておきましょう。契約時期と引渡し時期がキーになります。
消費税が10%になるのはいつの契約、引渡しからか?
工務店などに建築を依頼する注文住宅の場合は2019年4月以降の契約かつ10月以降の引き渡し、建売住宅とマンションは2019年10月以降の引き渡し物件が対象です。
いずれも2020年末までに引き渡される契約に限られます。
注文住宅の場合、2019年3月以前の契約ならば2019年10月以降の引き渡しでも、消費税8%なので3年延長の対象になりません。消費税が8%か10%かは選択適用ではなく、強制適用になる点に注意が必要です。
贈与税が非課税になるとどれだけトクするか?
普通に1310万円の贈与を受けると、その贈与所得に対して365万円の贈与税がかかります。
これに対して、2019年3月までに売買契約して優良な住宅用家屋を8%の消費税で購入した人は1310万円(1200万円+基礎控除額110万円)までの親の援助について、贈与税はゼロ円なのです。シンプルに365万円も得なのですよね。
さらに、この贈与によって親の財産が1200万円減るということは、親から財産を相続するときに払う相続税も1200万円分減らせて、100万円前後の節税になります(親の財産によって税率等が変りますので概算です)。
多くの贈与がもらえる人ほど、贈与税の非課税を利用することがお得となる仕組みです。
2019年4月以降の契約で10%の消費税が適用されるなら、贈与税の非課税枠だけでマンションが買えてしまう勢いですし、それによって節税できる相続税も大きくなります。親に経済的な余裕があるなら、相続税対策としてこれを利用すべきです。
贈与税の減税によって税収を増やしたい国の思惑
贈与税の減税は税収を増やすための減税措置であると言われています。減税なのに税収が増えるとはどういうことでしょうか?
親の財産を子供に使ってもらい、経済を活性化させたいということです。
財産を持っているのは、若い人よりもやっぱり年齢が高い人たちです。例えば40年前に結婚して子供ができたときに買った土地の値段は、5倍どころか、地域によっては10倍にもなっています。
しかし財産がある60代、70代の人たちは子供が家から独立すると、大きな家に建て替えることはありません。そんなスペースは必要なくなります。むしろ、子供たちが出て行った後の子供部屋は物置になるなど、持て余してしまう傾向にあります。持っている財産が消費にまわりにくいのですよ。
そこで、政府としては60代、70代の親から、40代、50代の子供に、さらには、20代、30代の孫に財産が移転すれば、国内で使ってくれるので経済を活性化させることができると考えているというわけです。
これまでの政府の姿勢は『贈与して欲しくない、相続税を払ってほしい』というものでした。
人が亡くなったことは隠せないので、相続税を取りはぐれる事はありませんし、その日を選ぶことはできないので、税金も公平に計算されます。これに対して贈与の場合には、それがいつ、どのようにして行なわれたのか、納税者に自己申告してもらわないと分かりません。
そこで、従来の贈与税は相続税よりもかなり高く設定されていたのですね。
しかし現在は贈与税の制度を緩和して、贈与をするように仕向けています。これは、それだけ税収が減って日本政府が追い込まれている事を意味するのです。
親ローンなら贈与税がかからないが借用書を作って税務署対策を
親からの援助には親からお金を借りる「親ローン」もあります。これは返済することを前提にしているわけですから贈与ではありません。なので、贈与税の非課税と関係なくそもそも贈与税の対象になりません。
親としても老後資金が心配なので、贈与はできないけど、貸すのはできるという状況はあり得るでしょう。また、贈与税の非課税上限を超えて資金援助してもらう場合は、超えた部分を借りたことにしておけば、贈与税はかからないということになります。
しかし、このようにして親から借りる場合は税務署に対する対策をたてておく必要があります。「借りたと言いながら、実質的には贈与じゃないのですか?」と聞かれたときに、「確かに借りたのです。」という反証を用意しておかなければ、贈与であると見なされる可能性があるのですよ。
事実、マイホームを購入すると、何人かに一人は「購入した資産についてのお尋ね」という郵便物が税務署から届きます。その書類には購入した物件について、以下のように詳細な回答を求められます。
- 頭金を幾ら入れたか?その頭金はどの金融機関の誰の口座から払ったか?
- 借入の金額はいくらか?借入はどの金融機関で誰の名義で借りたか?
そして、税務署は回答と金融機関の記録とを照合するのですね、これを反面調査といいます。つまりウソの回答をしても金融機関の記録と食い違うので必ずバレます。
なので、借用書(利息を付けてちゃんと完済する内容のもの)を取り交わし、毎月返済していく必要があります。その返済は現金手渡しではなく、銀行振り込みで行いちゃんと金融機関の記録を残しておけば、「借用書どおりに借りたお金であって、現に返済している。」という証拠になります。
≪借用書の例≫
(注1)収入印紙は借入金額によります。
50万円を超え100万円以下 1千円
100万円を超え500万円以下 2千円
500万円を超え1千万円以下 1万円
1千万円を超え5千万円以下 2万円
(注2)無利息や、利率が安すぎると贈与とみなされてしまうことがあります。サラリーマンが会社から借りた場合の利率が0.2%未満(2018年1月以降居住)のときは住宅ローン控除の対象外になる、というのが一つの目安になるでしょう。
(注3)親からの借り入れについては、住宅ローン控除の対象外です。
まとめ~減税制度をフルに利用しよう
家を建てる、購入するというのは、個人としては人生でもっとも大きなお金を動かすことであり、個人レベルで目に見えて社会経済に貢献することでもあります。
ですから国は、私たちが家を購入しやすくするために減税制度や補助金制度でその後押しをしているのです。
マイホームを買うことで出ていくお金のことばかりでなく、減税制度や補助金制度を知り、最大限に利用することで何百万円もの違いが出てきます。知っているか知らないかだけで何百万円もの違いが出てくるポイントですよ。
千日太郎に出会った皆様が家と住宅ローンで賢い選択をし、素敵な人生を送られることを願っています。
文:千日太郎