皆さんは定期借家契約という言葉をご存知ですか?
賃貸住宅では、2年毎に更新するというイメージを持たれている方も多いかもしれません。
定期借家契約は、契約で定めた期間の満了により、更新されることなく確定的に契約が終了する契約です。
ここでは、定期借家契約の詳細やメリット・デメリットをご紹介していきます。これまで定期借家契約をご存じなかった方はぜひご参考ください。
普通借家契約と定期借家契約
現在の賃貸契約は、従来型の普通借家契約制度と定期借家契約制度の2種類で構成されています。
従来型の普通借家契約は、みなさんも一度は利用されたことがあるのではないでしょうか。
ここでは、普通借家契約と定期借家契約の違いをご紹介します。
普通借家契約
契約方法
普通借家契約の契約方法は、原則として契約書などの書面による契約に加え、口頭での契約も可能。
しかし、契約後のトラブル防止などの面から考えると、契約書での契約がオススメです。
契約期間
普通借家契約における契約期間は2年の場合がほとんどです。しかし、例外もあり、1年以上が一般的となっています。
更新の有無
「上記の契約期間が過ぎても、まだ住み続けたい!」と思ったらどうすればよいでしょうか?
普通借家契約では、貸し手が契約更新を拒否する明確な理由がない限り、契約を更新することが可能です。
解約方法
契約期限を待たずに解約する場合、貸し手に対してどのような手続きをすればよいのでしょうか。
途中解約の際は、契約内容に記載された特約に従うことがほとんどです。現在は、『解約の1,2ヶ月前までに貸主に対して、中途解約の旨を伝えれば有効に解約ができる』と記載されている場合がほとんどです。
万が一この特約がない場合、契約期限までの賃料を請求される可能性もあります。途中解約を希望する場合には、契約内容を改めて確認してみましょう。
定期借家契約
定期借家契約は、普通借家契約と比較してどのような点が異なるのでしょうか?
定期借家契約の特性を確認していきましょう。
契約方法
定期借家契約は、契約期間を明確に定めた上で、契約しなければなりません。契約には、公正証書などの公的な証明書が必要となります。
貸し手は借し主に対して契約の更新をせず、契約満了とともに終了することを事前に説明する必要があります。(契約期間が1年以上の場合のみ)しかし、万が一貸し手がそれを怠った場合、その契約は普通借家契約として扱われます。
契約期間
定期借家契約の場合、契約期間は貸し手と借り手、双方の合意によって決めることができます。
更新の有無
契約期間が確定的に定められているため、更新することはありません。
しかし、契約満了後も貸し手の同意のもとで再契約が可能な場合もあります。
解約方法
定期借家契約では、契約時に契約期間を明確に設定します。しかし、もし転勤などで住み続けることができなくなった場合は、普通借家契約と同様、貸し手に対して中途解約を申し出ることが可能です。やむを得ない事情での中途解約となった場合、解約を申し出てから1ヶ月後に契約が終了します。契約時に中途解約に関する特約があれば、その内容に従って解約ができます。
※ただし、中途解約可能となるのは床面積が200㎡の未満の住宅のみ
定期借家契約の現状
ここまで、定期借家契約の特性についてご紹介してきましたが、賃貸を探す際に、定期借地契約という言葉を見たことがない方も多いと思います。
国土交通省住宅局が発表した平成26年度住宅市場動向調査書によると、民間賃貸住宅に住み替えた世帯における定期借家制度の認知度は上昇傾向。とはいえ、制度の名前も内容も知っているという人は平成26年の時点で11.2%と、あまり知られていない契約形態と言ってよいでしょう。
それもそのはず。
同資料によると、定期借家制度の住宅は平成26年の時点で、わずか3.2%しかありません。インターネットなどで賃貸情報を探しても、なかなか目にすることがないのも納得ですよね。
定期借家も検討したいと思った方は、住みたいエリアの不動産屋を訪ねてみてはいかがでしょうか。
メリット・デメリット
ここからは、定期借家契約のメリットとデメリットを借り手と貸し手、それぞれの立場からご紹介します。
借り手
メリット
【賃料が相場より低い】
借り手がその住宅を気に入ったとしても継続して住むことが少ないために、借り手がつきにくいことが多くあります。その対策として、貸し手は賃料を相場より低く設定することも珍しくありません。定期借家契約の住宅に目を向けることで、良質な物件を予算内で借りられる可能性があるでしょう。
デメリット
【おとり広告として使われていることも…】
居住期間が短い場合、引っ越しや住宅の清掃が必要となり、そのための料金が発生します。また賃料が普通借家契約よりも低く設定されていることから、おとり広告として定期借家契約の物件が悪用されていることが稀にあるので、契約の際は注意が必要です。
貸し手
メリット
【トラブルを回避しやすい】
借り手の中にゴミ捨てをルールどおりに行わなかったり、騒音問題を起こす住人がいたらどうでしょう?普通借家契約であれば、注意勧告程度しか対策がなく、退去を強制することができないのが現状です。
しかし、定期借家契約であれば、悪質な住人は契約の満了とともに退去せざるをえません。もし、契約満了でも借り主が継続して住むことを希望する場合、貸し手は再契約可能です。
その結果、迷惑な住人は退去し、優良な住人は定住する仕組みができあがるため、貸し手にとって負担が少ない賃貸運営が可能となります。
デメリット
【手間がかかる・賃料を低く設定しなければいけない】
貸し手は、借り手との契約時に、契約書とは別に定期借家契約に関する説明書面の用意や、契約終了の6ヶ月から1年前の間に期間満了の通知が必要です。普通借家契約の場合と比べると、大家としてやるべき作業が増えます。また、定期借家契約があまり普及していないこともあり、賃料を相場よりも低く設定しなければならないこともあります。
定期借家契約も検討してみては?
最後に、定期借家契約について簡単に振り返ってみましょう。
- 契約期間が明確に定められた賃貸契約
- 住み手がつかない空き家の有効活用につながる制度
- 期間が明確に定まった移住(転勤など)に対応しやすい
定期借家は、賃料が安いといったメリットがあり、住みたいエリアにあれば利用してみたい…と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
流通している数は少ないですが、気になる方は不動産屋さんで相談されてはいかがでしょうか。
文:小倉大将