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【マンガ】「突然死」は入園後1週間以内が最多! すべての人に求められる「慣らし保育」への理解【松本えつをの子育てあるあるvol.48】

「慣らし保育」とは? 保育園はみんな実施しているの?

現在、国内の多くの保育園で実施されている「慣らし保育」。
慣らし保育とは、乳幼児が保育園などの新しい環境に入る際、ごく短時間から少しずつ、あずける時間を長くしながら慣らしていく制度。

たとえば、保育初日は親子同伴で1〜2時間、次に子どものみで1〜2時間、次に朝からお昼ご飯まで、次にお昼寝の時間まで、次に午後のおやつの時間まで……と、徐々にあずける時間を延ばしていき、最終的には朝から夕方(正規の保育時間)まであずけるといった感じで進める。

慣らし保育はすべての保育園で実施しているものではなく、比較的「認可保育園」で多く見られる傾向がある。
また、慣らし保育に要する期間は短い場合で3〜4日、長くて2週間、平均で1週間〜10日と言われているが、期間や進め方は自治体や園によってさまざま。
慣らし保育の存在の「認知度」も、地域によって差がありそうだ。

「意味あるの?」という声も。「慣らし保育」制度の問題点

保育園の登園は「原則として」保護者が送迎する。

※ 親以外の親族が送迎することもあれば、固定のシッターやサポーターが送迎することもあるが、トラブル回避のため親以外の送迎を禁止している園もある。

当然、慣らし保育の期間も例外ではない。

たとえば、「朝、保育園まで子どもを送り、午前10時にはお迎え」という日や、「朝、保育園まで子どもを送り、正午にはお迎え」という日が存在し、「それらの送迎をすべてフルタイムで職場復帰している母親が行う」ということがよく起こりうるのだ。

そのため、慣らし保育に対し、特に母親サイドからはこんな声も。

すでに認可外にあずけてフルタイムで職場復帰していたので、今さら入園のために2週間近くも仕事を休めない

新しい職場に採用が決まって、しょっぱなから送り迎えで遅刻や早退を連発。周りから仕事に対する姿勢を疑問視されそうでつらい

こういった「慣らし保育」と「仕事」の両立に関するものが特に多い。
しかし、中には……

ウチの子は人見知りもしないし、大丈夫。仕事の繁忙期なんだから短く済ませてほしい

というような、「ウチは大丈夫だから特別に認めて」といった声も。
あるいは……

保育料払ってるんだから最初から決まった時間分、ちゃんとあずかってほしい

というような、「良い保育の定義」や「慣らし保育の目的」が少しズレているような気もしなくないような声まで。

あがる声の内容はさまざまだが、唯一、総じて言えるのは「慣らし保育の認知度が極めて低いことが原因になっている」という点ではないだろうか。

現状を見聞きする限り、おそらく、世間一般に慣らし保育の目的が正しく伝わっておらず、いまいち必要性がわかりづらいのだ。

突然死がもっとも多いのは、あずけ始め1週間!

慣らし保育については、すでにいくつかのメディアで説明されている。
しかし、慣らし保育の目的を的確に記しているものは少ない。
そのためか、認知度はいまだに低い。

「慣れない環境に順応できないと、あずけるときに子どもが親と離れ離れになるのがつらくて泣きわめくので、そうならないように、こうしましょう!」というような、身近でわかりやすい表現を重視した記述であれば、数多く見られる。

たしかに、子どもに泣かれるのはつらいし、純粋に「そうならない方法を知りたい」と親であれば誰でも思うところだが、それはそれでさておき、慣らし保育の目的や存在意義は、そのような表面的なところより、もう一歩踏み込んだ場所にあるのではないだろうか。

今年の2月、こんなニュースが発表された。

内閣府のまとめでは、保育施設に預けられた乳幼児が睡眠中などに突然死亡する「突然死」はおととしまでの10年間に146件報告されています。
このうち事故などのケースを除く43件を、多摩北部医療センター小児科の小保内俊雅部長らの研究グループが分析しました。その結果、全体の30%が預けはじめから1週間以内のごく初期に起きていて、1か月以内に起きた突然死は全体の半数に上っていたのです

*乳幼児もストレス!? 保育園預けはじめに注意 | NHKニュース https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180219/k10011330341000.html

同記事によると、保育園等にあずけられた乳幼児のうち、突然死に見舞われる時期としてもっとも多かったのは、入園後1週間以内。全体の半数は入園後1ヶ月以内ということだった。

なお、アメリカでも同様の報告があがっているらしい。

こういったニュースは、もっと大きく取り扱われるべきである。

まだまだ多くのものを見たことがなく、言葉も少ししか知らない乳幼児。
だけど……だからこそ、彼らは自分でも把握できないところで強いストレスを感じ、知らず知らずのうちにそれを抱え込んでしまっているのかもしれない。

同記事では、次のようにも書かれている。

乳幼児の突然死を研究している小保内部長は「新しい環境でのストレスと突然死については、各国の研究を見ても国際的に同じ傾向が出ている。(中略)保護者の職場の状況によっては早い復職を求められるケースもあるかもしれないが、危険性が高いことが分かってきた以上は、保育園での初期の預け方、預かり方を社会で考えていく必要がある」と警鐘を鳴らしています。

慣れない環境では情緒不安定になるから……
友だちができるまでは寂しいだろうから……
親と離れるとずっと泣き続けてしまうかもしれないから……

たしかに、そのようなことを避けるためにも、なんらかの策は必要で、そのひとつとして慣らし保育を実施しているとしても「間違いではない」だろう。

しかし、子どもの不安うんぬん以上に格段に恐ろしく、絶対的に防ぎたいのは「突然死」などの死亡事故である。
これは、親にとっても、保育園にとっても、社会にとっても同じだ(同じであってほしい)。

先述の「危険性が高いことが分かってきた以上は、保育園での初期の預け方、預かり方を“社会で”考えていく必要がある」のように、まさに、親だけでなく、社会全体で考えていく必要がある大切なことなのだ。

社会が子どもの命を守るためにできること

親にとって、わが子の命はきっと自分の命の何倍も大切なものである。

ゆえに、もし、慣らし保育が「子どもが泣かないように」という目的よりも「子どもの命を守るために」という目的を掲げて実施されるならば、親にとっての慣らし保育の位置付けはこれまでと変わっていくに違いない。

それぞれの立場で、今から何ができるだろうか。

《親ができること》
・慣らし保育の存在を入園より前に知り、あらかじめ職場に伝えること。
 職場の理解のなさを嘆くだけでなく、先回りしてできることをしておこう。
・その上で、調整できる業務は調整しておこう。
 職場で重要な役割を担っている人は特に注意すべきである。

《保育園ができること》
・入園する子の保護者に慣らし保育の実施があることを「事前に」伝えること。
・慣らし保育の実施を伝える際に、その目的も的確に伝えること。
・「慣らし保育」ではなく、「突然死予防週間」等の名称に変えるなどの工夫も。

《企業や職場関係者ができること》
・慣らし保育の存在を知り、理解を示すこと。
・チーム編成やプロジェクトの進行スケジュール作成の際にそれを考慮すること。
・同時にその他の社員やスタッフにもそれを共有すること。

《国や自治体ができること》
・慣らし保育の存在を各種メディア等を用いて広く認知させること。
・認可保育園の慣らし保育のピークを分散させる等の対策を考えること。
 ※ 園によっては3月から慣らし保育を開始できるところもある。

***

ハードな保活を続け、やっとこさ入園にこぎつけたところで、心機一転、仕事に精を出そうと思った途端に、慣らし保育との両立につまづくのは極めてつらいもの。

でも、そんなハードルも、たったひとりで乗り越えようとしなくていい。
仕事だって子育てだって、周りと力を合わせて進めていくべきもの。
子どもたちを守るのは、親だけじゃない。みんなだ。

社会全体でできることを、ひとりひとりが意識して、行動に移していこう。
そうすれば、子どもを取り巻く環境が、もっと安全なものに変わるはず。

文:松本えつを

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◆ 文・ストーリー構成:松本えつを(役名:きのこ)

絵本作家・エッセイスト・コピーライター。2007年、8年間役員をつとめた出版社から独立。2008年、出産後の出血多量で死にかけるも一命をとりとめたことをきっかけに、女性が働きづらい社会を少しでも変えたいと一念発起。以降、ニッポンの女性アーティスト・クリエイターの自立支援を目的とした教育&プラットフォーム事業を立ち上げ、多くの女性たちの声を聞く。2014年、クリエイターを対象としたマンガコンテンツ “ クリエイターあるある in 日影工房 ” を企画・制作。これまでの著書の大部分は大人の女性を対象としたものとなる。代表作に『バンザイ』(サンクチュアリ出版)、『ユメカナバイブル』(ミライカナイ)等。

クリエイターあるある in 日影工房
ウーマンクリエイターズカレッジ「絵本の学校」

◆ 絵:ささはらけいこ(役名:もじゃ)

1984年北海道生まれ。金沢美術工芸大学油画専攻卒。東京クリエイターアカデミー(現ウーマンクリエイターズカレッジ)を経て、2010年よりイラストレーター・絵本作家として活動を始める。2014年から “ クリエイターあるある in 日影工房 ” の作画を担当し、「もじゃ」役として出演。2015年におまんじゅうのような子どもを出産し、テンヤワンヤで子育て真っ最中。
ささはらけいこポートフォリオサイト「星ふるモジャモジャの丘」

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