すみかる住生活版

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千日太郎

こんにちは、ブロガーの千日太郎です。不動産投資についてネットで調べると、平均的な相場の目安は何%が理想なのか?利回り何%あれば儲かるのか?という質問が多いですね。

最初に結論から言いますと、広告の「表面利回り」だけでは決め手にはならないです。むしろ広告で表面利回りが高い物件は眉につばを付けてよくよく検討する必要がある物件です。

今日はプロの視点から、不動産投資の利回りとは何か?利回りと投資意思決定のツボについてお話ししましょう。

CONTENTS

表面利回りと実質利回りの違いを知る

投資不動産の販売図面の利回りは普通『表面利回り』を言います。ハッキリ言いまして、この表面利回りって屁のツッパリにもならない数字なのですよ。もう1つの『実質利回り』がその物件によって儲かる収入を意味します。

まずはこの2つ利回りの違いを理解しましょう。

表面利回り=家賃収入/物件価格

利回りとは、投資額に対する年間収入の割合を言います。

投資不動産の表面利回り=家賃収入(年額)÷物件価格で計算される割合です。

つまり、空き室になるリスク、諸経費を考慮せず、満室前提で計算した投資額に対する年間収入の割合です。

例えば、家賃収入が月10万(礼金20万)なら最初の1年で140万です。その物件価格が2500万円の場合の表面利回りは以下のような計算式で算出できます。

5.6%=140万円÷2500万円×100

仮に全く経費がかからず(そういうことはあり得ないですが)、ずっと借り手が付いている状態で2500万の投資を回収するのに17.8年かかるという計算ですね。

実質利回り=(家賃収入-経費)/物件価格

普通は経費として管理費や修繕積立金、固定資産税などの費用がかかります。実質利回りは実際に手許に残されるキャッシュで利回りを計算するものです。

不動産投資で必要となる経費の種類

では、不動産投資でかかる費用について解説します。その態様によって3つのグループに分かれます。

  1. 最初に一度だけかかる費用:物件価格に含める
  2. 毎年固定的にかかる費用:固定費
  3. 臨時的にかかる費用:変動費

1.最初に一度だけかかる費用=物件価格に含める

まずは投資不動産の購入のために一度だけ払う費用を確認しておきましょう。不動産の購入は物件の価格だけ払えば買えるものではなく、各種の手数料や税金がかかります。

これらの費用は取得にかかる費用として物件価格に含めて計算します。トータルで概ね物件価格の5%前後です。

2.毎年必ず必要な費用=必要経費(固定費)

不動産投資で必要となるお金は購入時の諸費用だけではなく、事業のために必要なランニングコストにもかかってきます。主として固定的にかかる費用(固定費)には以下のようなものがあります。

3.必要に応じて支出する費用=必要経費(変動費)

また、固定費以外に、必要に応じて支出する費用、臨時的にかかる変動費があります。主な変動費は以下のようなものがあります。

実質利回りのシミュレーションをしてみよう

目を向けるべきは実質利回り

次のような投資不動産を例にとって実質利回りがどのくらいになるのか?計算してみましょう。

【物件情報】
物件価格:2500万円(築年数10年、駅徒歩7分)
家賃収入:10万円/月
礼金:20万円
融資金額:2500万円(金利1.9%、30年元利均等返済)

1年間の家賃収入は20万+10万×12か月=140万円です。
物件価格2500万円の不動産の投資に対して、最初に一度だけかかる費用が5%とすると、125万円ですね。つまり投資額は2500万円+125万円=2615万円となります。

【固定費】
管理費・修繕積立金:18万円/年
不動産業者の管理費:家賃の5%として120万×5%=6万円
固定資産税:6万円
火災地震保険料:0.5万円/年
借入金利息:47万円/年
税理士報酬:3万円

これらを全て合計すると、18万円+6万円+6万円+0.5万円+47万円+3万円=80.5万円となりました。

【変動費】
交通費:1万円
自己啓発費用:1万円

合計で2万円です。

実質利回りと表面利回りの違い

家賃収入120万円と礼金20万円で収入は140万円です。そこから固定費80.5万円と変動費2万円を差し引きし、投資額2615万円に対する割合を計算します。

【実質利回りの計算式】
(140-80.5-2)/2615×100=2.199%

となりました。

同じ条件で表面利回りは収入140万円として投資額2500万円に対する割合を計算します。

【表面利回りの計算式】
140/2500×100=5.6%

全然違いますよね。表面利回りは実質利回りの倍以上になっています。

空き部屋になるとどうなるか?のシミュレーション

実質利回りはさらに空き部屋のリスクも把握できます。例えばこの前提で6か月空き部屋となってしまうとどうなるか?

収入は家賃10万×6か月+礼金20万=80万円ですね。これに対して費用は同じようにかかります。

【実質利回りの計算式】
(80-80.5-2)/2615×100=-0.096%

このようにマイナスになりますので、赤字ということですね。ちなみに5か月の空き室ならばギリ黒字になります。つまり、損益分岐点(損失と利益の境目)の空き室期間は6か月ということが分かります。

同じことを表面利回りで計算すると、次のようになりますね。

【表面利回りの計算式】
80/2500×100=3.2%

利回りが3.2%ということが分かったところで、何の意味も無いということがお分かりいただけたと思います。

表面利回りよりも重要な物件の目利き

コスト以外の重要項目

つまり、表面利回りがいかに高くても、一定期間空き室になってしまうと赤字に転落します。逆に表面利回りが低くても、人気の物件ですぐに入居者が入る物件であれば、逆に今の入居者が出て行ってくれた方が次の入居者の礼金の分だけ儲かってしまうのが不動産投資なのです。

都心の築浅物件の場合

一般的に都心の築浅物件は家賃を高めに取れますが、物件価格も高いため表面利回りは少し低めになるのが通常です。5%とかいうような低いものになることが多いです。

しかし、立地が良くて設備も新しいので空き室リスクは低くなりますね。注意点としては最初は管理費・修繕積立金が安くなっていますが、最初の大規模修繕である10年目あたりで修繕積立金が2倍から3倍に上がるということです。

郊外の築古物件の場合

郊外の物件や駅から遠い物件、築古物件などは物件価格が低いので表面利回りが高くなるのが通常です。中には10%を超えるような高利回りの物件もあるでしょう。

しかし、築年数が古くなるにつれて修繕費がかかりますし、配管などの修繕費用のかかる設備が耐用年数を迎えてしまうことが多いです。

また、都心の築浅と比べて空き室のリスクが高くなります。利回りが高いというのは賃貸できていることが前提です。借りる人がいなければゼロ%です。入ってもらうために相場よりも家賃を下げれば当然利回りも下がります。

この家賃で貸せるのか?借りる人が居るのか?という目利きの重要性

表面利回りというのは、あくまで想定の家賃収入を物件価格で割った数字に過ぎません。

支出を上回る収入があるのか(黒字になるのか)?は実質利回りで計算しなければ分かりません。そして、実質利回りも空き室のリスクまでを反映するのは困難ですし、修繕費用などの臨時的な費用を反映するのにも限界があります。

もちろん、様々なケースを前提としてシミュレーションする必要がありますが、数字とは別の切り口から、物件そのものの目利きも重要になります。つまり、今借りている人が出て行ったとして、次の借り手を見つけられるような物件なのか?という判断も重要となってくるのです。

物件価格が安いから(表面利回りが高いから)という観点で物件を決めると失敗します。自分ならこの家賃でこの物件に住みたいか?という切り口から考える方が実態に近い利回りを把握できるでしょうね。

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