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ミサが無痛分娩を迷う理由 〜マダム・リリーのお悩み相談サロン【Case.4】〜

マダム・リリーがミサに伝えたいことは?

リリー「ちょっと待って。私はなにも、必ずしも無痛分娩が良いってお勧めしてるわけじゃないのよ。あなたは、お義母さんの言うことに惑わされているばかりで、無痛分娩のメリットやデメリット、それにリスクについても、しっかりと自分で調べて、きちんとお義母さんに説明したのかしら?

例えば、無痛分娩の痛みが和らぐ以外のメリットとして、産後の回復が早いことがあげられるわ。35歳のあなたにとって、これから始まるハードな育児のために、少しでも体力を温存できるならそれに越したことないわよね。

それに、痛みが軽くなることによって、ママの呼吸が安定して、赤ちゃんに酸素が十分に供給されて赤ちゃんも楽になるって言われているわ。これは、お義母さんが聞いたら目から鱗なんじゃないかしら。

でもね、きちんとデメリットやリスクのことも考えなくてはいけないわ。これは、あくまで私の体験談だけれど、麻酔が効いたせいか、出産後にすごく気分が悪くなって、しばらく吐き続けたの。出産自体は、痛みもほとんど感じなくてスムーズだったけれど、あれはしんどかったわ。

同じように、麻酔のせいで頭痛がひどかったり気分が悪くなったりするという体験談はよく聞くわね。麻酔の副作用はかなり個人差が大きいから、自分がどうなのかは、経験してみないとわからないのよね。

それに、痛みが少ないからいきむ感覚がつかめなくて、吸引分娩や鉗子分娩になりやすいというデータがあるわ。この処置によるリスクは小さいけれど、会陰の傷が大きくなることが多いの。

こんな風に、良い面も悪い面もある。技術が未熟な医者が無痛分娩をおこなった場合、もっと重篤な副作用を引き起こす恐れもあるし、実際に下半身不随や死亡事故の例も、希だけれどなくはないの。

それを、できる限り自分でしっかりと調べて、自分でしっかりと考えなくてはいけないわ。そして、もし無痛分娩を選ぶのなら、反対しているお義母さんに、すべてきちんと説明して納得してもらうことよ。

昔は聞かなかった技術だから、きっとよくわからないまま反対しているだけなの。ちゃんと説明を受けたら、コロッと賛成する可能性もあるわよ。とりあえず、このサイトを熟読することをお勧めするわ。

『日本産科麻酔学会(JSOAP)』のHPよ。
http://www.jsoap.com/

『無痛分娩のみならず、産科麻酔・周産期医療の発展に寄与すべく活動する医療従事者、および一般の方々へ情報を提供するサイト』ですって。これを必要としてる人が、きっとくると思ってブックマークしておいたの。

周りの意見や反応によって重要な選択を決めてしまうということは、つまりは自分で責任を背負ってないってことよ。後悔したときに、周りのせいにできるもの、ある意味楽よね。

他でもないあなたと、あなたの大切な赤ちゃんのことでしょ。あなたと赤ちゃんのためにどうするのが1番いいのか、ちゃんと自分で考えて、自分で決めて、その責任を自分で負う覚悟をするの。

母親ですもの、きっとそういう強さを、すでにあなたも持ってるはずよ。」

ミサ「そっか、私、自分と赤ちゃんの重要な決定を他人に委ねることによって、母親になる覚悟からどこか逃げていたのかもしれません。どうしてわかったんですか?」

リリー「うふふ、私にはなんでもわかるのよ」

ミサ「ありがとうございます!マダム・リリー!」

そう言って、サロンをあとにしたミサ。
頼りなさげに見えたミサの目には意志の光が宿り、お腹をさする手には、優しい力がみなぎっています。

文:つかまい子

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