みなさんのおうちにキッズチェアはありますか?「こどもが大きくなったから、うちにはもう用済み、いらないわ」と思っていませんか?
小ぶりでどこか愛嬌のあるキッズチェアは、小さなお子様だけのものではありません。ほんの少し視点を変えてみると、おとなにも実用的なアイテムになったり、インテリアの主役になったりと、大活躍します。
お子様のために購入を考えている人はもちろん、おとなだからこそ、ついつい夢中になるキッズチェアのある生活をのぞいてみましょう。
ちょこっとさんで、働き者
これは、都心から少し離れた小ぶりなマンションの一室でのお話です。
この部屋には、一脚で何役もこなす働き者のキッズチェアたちがいます。
おうちでの「こんなときちょこっと……」という場面こそ、キッズチェアたちの出番です。
リビングでは読書好きの奥様が、壁一面の本たちから今日の読書タイムの本を選んでいます。
今日の読書のお供は少し高い棚にある本に決めたようです。
もう少し!
でも背の低い奥様が手を伸ばしても、ちょっと届きません。そこで奥様を助けたのは、片手でもさっと持てる小さなキッズチェアです。
気をつけて! いえいえ、ご心配は無用!
長いスカートをはいた奥様でも、この小さな椅子の座面の高さは気になりません。
軽快な足さばきで上に乗り、おめあての本を手に取りました。
一冊読み終えた奥様は、大好きなハーブティーとビスケットに舌鼓(したづつみ)を打ちます。
そんなとき、キッズチェアは小さなサイドテーブルに変わります。
さてさて、そろそろ夕飯の支度をはじめるとしましょう。
キッチンでは、トントントントンと包丁とまな板の合唱が聞こえてきます。
ジャガイモの皮むきがはじまりました。
ここでは、脚の長いキッズチェアが優しく奥様を支えています。
<ピンポーン>
どうやら奥様のお母様が遊びにきたようです。
またまた、小さなキッズチェアは大活躍。
お出迎えし、靴をぬぐお母様を支えます。
それから、お母様の手荷物を大切にお預かりしてしまう優等生ぶりです。
どうやらこの隙にキッチンでは、長い脚のキッズチェアが風を楽しむ猫さんの特等席になったようです。
お母様がひろげた風呂敷からは、小さなクマのぬいぐるみ。こんど加わる新しい家族のために、奥様の小さいころのおともだちを連れてきてくれました。思いがけないともだちとの再会に、奥様の瞳が潤みます。
小さなキッズチェアは、昔の戦友を乗せて胸を張ります。
もし言葉を話せたなら、「やあ戦友くん、久しぶりだね!」と言っていることでしょう。
小ぶりな花がそえられ、小さなディスプレイ台に変身しました。
そのころキッチンには、いい香りが広がります。どうやら夕飯のしたくが整ったようです。
もうそろそろ旦那様も、「ただいま!」と帰ってくることでしょう。
きっと本日の夕食は、「奥様の幼いころ」の話題がおかずに加わり、家族話に花を咲かせ、笑いに包まれたひとときになるでしょう。
おしまい。
傷あとは、おとなを物語の世界へいざなう扉
アンティーク家具としても人気が高いキッズチェアは、質のよいものが手頃な価格帯で売られていることも多く、同じものを複数購入する人もいるため、入荷した即日に売り切れてしまうことも珍しい話ではありません。やんちゃな子どもたちが使うことを想定して、しっかりとした造りのものが多く、何世代にも渡って使うことができます。
また、使っていた人のくせなどによって、同じ製品のキッズチェアでも違った味になることも、おとなたちが惹きつけられる魅力のひとつとなっています。子どもたちがやんちゃしてつけた傷や、はがさず残っているシールなどのひとつひとつが、物語の世界へといざなう扉になります。
便利で愛嬌があって、さりげなくインテリアの主役にもなる働き者のキッズチェア。何だかワクワクしてきませんか?
文:柳井風凛