卒乳とは? 断乳とは違うの?
「卒乳」「断乳」などというけれど、そのふたつはどう違うのかな。
卒乳は「母乳を卒業」で、断乳は「一時的に母乳をお預け」かな。
……いやいや、ちょっとその解釈は違うみたいだ。
★ 卒乳とは……?
赤ちゃんが自然とおっぱいを飲まなくなること。
ex.)母乳の分泌量が減り、赤ちゃんが自然と飲まなくなっていった。
ex.)離乳食が進んでおっぱいを欲しがらなくなった。
★ 断乳とは……?
母子の環境の変化などの「都合」or「事情」から生まれるママの意思によって、赤ちゃんにおっぱいをあげるのをやめ、その結果、赤ちゃんがおっぱいを飲まなくなること。
ex.)ママの仕事復帰や赤ちゃんの通園スタートしたので授乳をやめた。
ex.)ママが授乳に影響のある薬を飲むので授乳をやめた。
ex.)ママが下の子を妊娠し、産婦人科の先生に言われ、授乳をやめた。
「中断する」などの言葉から、断乳は「一時的に断つ」ことかと思いきや、両方とも「永続的にやめる」ということを意味する言葉。
そして、「卒乳は赤ちゃん側から」なイメージで、「断乳は環境要因から」のイメージだね。
なお、一般的に、卒乳と断乳の割合はだいたい「半々」とのことだよ。
卒乳・断乳のタイミングでよいとされるのは、いつ?
赤ちゃんの成長過程においてのその他いろいろと同じだけれど、卒乳や断乳にも「いつ頃にはしなくてはダメ」という明確な決まりは、ない。
タイミングはあくまで、人それぞれってことだね。
※ 母子手帳から「断乳」という言葉が消えてから、かれこれ15年ほど経つよ!
※ WHO(世界保健機関)では2歳まで母乳をあげることを推奨している。
あえて、どんなときがベターかということに答えを出すならば、「赤ちゃんとママがお互い大きな不満もなく、自然と卒業できる時期がベター」といったところだ。
その前提で、一般的に多いと言われているのは「1歳を過ぎたら」というタイミング。
この頃になると、乳歯も前歯を中心として本数が増え、離乳食も1日3回摂れるようになる。
また、少しだけど言葉やジェスチャーでお互いがコミュニケーションをとれるようにもなるよね。
まぁ、くれぐれも「一般的に多い」と言われているだけなので、それより早くても遅くてもまったく気にすることはない。
そんなに大変? 意外とすんなり? こんなにもさまざま “卒乳・断乳あるある”
きのこが重い腰をあげて、友だちレベル以上の「超身近なママたち11名(授乳当時の年代:20代後半〜40代前半)」へ、ヒヤリングしたよ!
(厳密に言うと、10名 + 過去の自分だけどね!)
その結果、本当に十人十色な「おっぱいとのバイバイ」があった。
◆ 2歳3ヶ月で授乳中
当初は1歳を過ぎたあたりで自然と卒乳するものなのかなと思っていたが、保育園に通わせていないということもあり、母乳のこと以外もいろいろとマイペース。通常の食事に加えて、おっぱいもいまだに1日4〜5回あげている。せっかくここまできたのだから、本人が卒業の意思を示すまではこのままいこうと思う。
(20代後半)
◆ 1歳8ヶ月で断乳に挑戦中
本当は4月に認可保育園に入りたかったので、そこまでに卒乳をしたらいいなと思っていたが、保育園に入れず、現在待機児童。今は認可外に入れる準備をしているので、併せて断乳に挑戦しているが、ガマン比べによく負け、難航している。
(30代前半)
◆ 1歳半で断乳
完全母乳(完母)育児でやってきて、大きなトラブルもなく来たが、1歳半でわたしが職場に復帰することが決まり、それに併せて断乳を決意。添い乳が習慣化していたので、添い乳なしで寝付かせるということにかなり苦心した。1週間くらい、夜になると泣いていたが、その後はあきらめたようで、ぐずりながらも眠ってくれるようになった。
(20代後半)
◆ 1歳ちょうどで断乳
もともとお酒(ビール)が大好きなわたし。妊娠〜授乳期間は禁酒しなくてはいけないことがすごくつらく、たびたびイライラすることもあったので、主人と話して1歳の誕生日をきっかけに断乳しようと決めた。誕生日の2週間前から計画を立てて決行。離乳食が順調に進んでいたのもあり、スムーズだった。
(30代後半)
◆ 1歳手前で卒乳
うちの場合は1歳になるちょっと前くらいから娘が自然に飲まなくなった。離乳食を1日3回しっかり摂り、しかも全量完食。その後は興味が麦茶に移ったようで、よく飲んでいた。ちょうど暑い日が続いていたからかもしれない。
(30代後半)
◆ 10ヶ月で断乳
歯科診療と皮膚科診療を受けることになり、何種類かの投薬があったため、生後10ヶ月の頃に断乳。ちょっとずつ粉ミルクの頻度を増やし、さりげなく母乳の回数を減らした。すると、分泌が減り、それとともに子どもがおっぱいを求めることも減った。
(40代前半)
◆ 生後7ヶ月で断乳
出産からちょうど半年後、生理が再開。その後、2回目の生理を待たずして第2しを妊娠。担当の先生に断乳してくださいと言われて断乳した。その当時はすごくかわいそうに思えたけれど、本人はそれほどダメージを受けていない感じだった。
(30代前半)
◆ 生後半年で卒乳
子どもが、もともとおっぱいも粉ミルクも厭わず飲む方だったが、生後5ヶ月くらいから飲む量が増えて母乳の分泌が追いつかなくなり、粉ミルクでしのいでいたら、母乳はどんどん減る一方。いつの間にか娘がおっぱいを欲しがらなくなった。
(30代後半)
◆ 生後3ヶ月で卒乳
娘が3ヶ月くらいで急におっぱいに興味を示さなくなった。母乳の出があまりよくなくて、哺乳瓶のミルクのほうがごくごく飲めるから魅力的に感じたのかも。最初のうちはショックだったけれど、すぐに「出ないもんはしょーがない!」と気持ちを切り替えて乗り切った。
(40代前半)
◆ 生後まもなく断乳
生後1ヶ月も経たないうちに、わたしの不正出血があり、病院に運ばれ、入院。出血はかなり多く、それを境にパタリと母乳が出なくなってしまった。母乳が血液から作られていることを実感した出来事。後日、精神的ショックから母乳が出なくなることもあるという話を看護師さんから聞いた。そんなもんで、卒乳や断乳で苦労した経験がない。……というより、今思うとそのときの一連の出来事がまさに断乳だったのかな。
(30代前半)
◆ 生後まもなく断乳
持病の都合で産後まもなく完全ミルク育児に切り替えた。初乳だけはあげたかったので、それが叶っただけでも自分としては「よし」としている。第1子のときも同じような感じだったので、もう慣れたが、おっぱいをあげているほかのママを見ると羨ましく思う気持ちはずっとある。
(30代後半)
11人中、断乳が7、卒乳が3、授乳中(卒乳予定)が1という比率になった。
一般的に半々と言われているけれど、実際のところ、環境要因による「断乳」のほうが多くなっている感じだね。土地柄もあるかもしれない。
油断するとかなり厄介! 卒乳後は、ママのほうが要注意
卒乳をすると、今まで毎日のように母乳を出していたのを急にあげなくなるのだから、母乳は行き場をなくしてしまうね。
出産直後に、カチンコチンにおっぱいが張ってしまうことがあったかと思うけれど、そのとき同様、ケアの必要はあるみたい。
ケアを怠ると、次の子を産んだあとに母乳の出が悪くなったり、乳腺炎になってしまったりする恐れがあるので、要注意。
具体的にどんなケアが必要かというと、それも「どのくらいの頻度や量でおっぱいをあげていたか」などによってちょっとずつ違ってくる。
ここでは、オーソドックスなケース(1日に何度も授乳していたのをやめた場合)でのケアの方法をご紹介するので、各自で調整してやってみよう。
〜 卒乳後のおっぱいケア 〜
張って痛くなり、耐えられなくなったら、乳頭や乳輪は刺激せず、全体を軽く、優しく、両手のひらで包み込むように搾る。
これを「おにぎり搾り」と呼ぶ。
卒乳・断乳から……
1日目(初日):1日1回程度、おにぎり搾りで軽〜く搾乳。
2日目(毎日):1日1回ほど、おにぎり搾りで軽〜く搾乳。
3日目(毎日):1回、おにぎり搾りで出なくなるまで搾乳。
・ ↑
・ 約1週間
・ ↓
10日目(1週間おき):1回、おにぎり搾りで出なくなるまで搾乳。
・ ↑
・ 約1週間
・ ↓
17日目(1週間おき):1回、おにぎり搾りで出なくなるまで搾乳。
・ ↑
・ 約1週間
・ ↓
24日目(1週間おき):1回、おにぎり搾りで出なくなるまで搾乳。
・ ↑
・ 約1週間
・ ↓
31日目(1週間おき):1回、おにぎり搾りで出なくなるまで搾乳。
・
・ ↑
・ 約1ヶ月
・ ↓
・
60日目(約1ヶ月):1回、おにぎり搾りで出なくなるまで搾乳。
ここまで来て、白い母乳ではなく透明な母乳が出てくるようになっていればOK。
そのほか、なんら異常がなければ、卒乳・断乳後のケア、完了。
ケアの期間中は、産後すぐのときと同じように、乳腺が詰まることを避けるため、高カロリー高脂肪の食事を控えよう。
また、血行がよくなると母乳が分泌されやすくなるので、湯船に長時間つかることも控えよう。
ケアをしても次のような症状が出た場合は乳腺炎の恐れがあるので病院へGO!
・おっぱいに見慣れないしこりを発見した。
・おっぱいが張って、熱(38度以上)も出てきた。
母乳外来に行ってもいいし、出産した産婦人科を訪ねてもいい。
身体はデリケートなものだし、どんなときも素人判断は禁物。
すべてセルフケアで済ませようとする発想は御法度だよ!
卒乳は「焦らず」「落ち着いて」「自分たちのペースで」!
今回は、10名以上のエピソードを紹介しつつ、卒乳や断乳について書いたけれど、知れば知るほど「本当にいろいろなパターンがあるな」と実感する。
もし、これから迎えるであろう卒乳に不安を抱えている人がいるならば、どうか安心してほしい。
なぜなら、一度授乳が始まったならば、遅かれ早かれかならず、終わりもちゃんと来るからだ。
そして、そのタイミングやスタイルに決まりはない。
授乳や卒乳はもちろん、子育てというのはその工程のほとんどにおいて「決められたカタチ」はないのだ。
そう、子育ては母子に手によって生まれる「クリエイティブ」なのだから。
ママも、パパも、赤ちゃんも、「焦らず」「落ち着いて」「自分たちのペースで」、楽しみながらやっていきたいし、そういう創造性に満ちた世の中であってほしい。
***
きのこの子育てあるあるも今回でvol.50。
じつは連載当初から「たとえ病に伏そうとも頑張って50までは続けるわ」とお約束しておりました。
ついにそのvol.50です。
今や主人公となったユッキーは、あまりに波乱万丈な妊婦生活を送ったため、いつまでも妊娠していたり、いつまでも授乳していたりしましたが。
50回目にしてようやっとユッキー親子も「卒乳」のタイミング。
そしてユッキーは、自分自身の歩んできた道を振り返ってひたすら感謝していました。
「振り返るといつもそこに、支えてくれる人がいた……」
「それがなければ、歩んでこれなかった……」
そう、身に沁みて思うのです。
でも、彼女の子育ても、まだまだ卒業までは長い。
いや、むしろ本番はこれからなのでは!?
ここまでユッキーを応援してくださった方がもしいらっしゃったら、本当にありがとうございますと、きのこからもお礼申し上げます。
そして、ユッキーの子育てはこの先も水面下で着々と続きますので、どこか遠くで応援していてください。
いつかまた、彼女のファインプレーをご報告するときまで!
グッドラック!
文:松本えつを
▼松本えつをの子育てあるある▼
- 妊婦受け入れ拒否について想ふ。見出すべき「解」とはいったい何?
- 男性だって知っておくべき! 妊婦健診と保険のリアル
- 何歳まで妊娠できるの? 高齢出産について考える
- 妊娠超初期症状とは? つわりはどのくらいの確率であるの?
- 「でき婚かな?」と思ったら……聞く前に知っておこう! 妊娠週数の数え方
- もっと見る…
◆ 文・ストーリー構成:松本えつを(役名:きのこ)
絵本作家・エッセイスト・コピーライター。2007年、8年間役員をつとめた出版社から独立。2008年、出産後の出血多量で死にかけるも一命をとりとめたことをきっかけに、女性が働きづらい社会を少しでも変えたいと一念発起。以降、ニッポンの女性アーティスト・クリエイターの自立支援を目的とした教育&プラットフォーム事業を立ち上げ、多くの女性たちの声を聞く。2014年、クリエイターを対象としたマンガコンテンツ “ クリエイターあるある in 日影工房 ” を企画・制作。これまでの著書の大部分は大人の女性を対象としたものとなる。代表作に『バンザイ』(サンクチュアリ出版)、『ユメカナバイブル』(ミライカナイ)等。
◆ 絵:ささはらけいこ(役名:もじゃ)
1984年北海道生まれ。金沢美術工芸大学油画専攻卒。東京クリエイターアカデミー(現ウーマンクリエイターズカレッジ)を経て、2010年よりイラストレーター・絵本作家として活動を始める。2014年から “ クリエイターあるある in 日影工房 ” の作画を担当し、「もじゃ」役として出演。2015年におまんじゅうのような子どもを出産し、テンヤワンヤで子育て真っ最中。
* ささはらけいこポートフォリオサイト「星ふるモジャモジャの丘」