すみかる住生活版

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【マンガ】産後の入院中って何するの? 忙しい or 暇? 苦しくも、しあわせ? “ 産後入院中あるある ” 10選【松本えつをの子育てあるあるvol.39】

覚えなければならないことが案外たくさんある

初めての出産の場合、当然、子育ても初めてということになるので、産婦は出産と同時に自ずとママデビューすることになる。病院や施設は、産婦の産後の身体の状態をチェックしたり、サポートしたりする以外にも、子育てに必要な知識を得る機会や、その知識を実践するための機会を提供する役割を担う。多くの場合、出産翌日(出産日を0日目と数えて1日目)には、赤ちゃんのおむつの替え方やミルクの作り方・あげ方を教える。また、産婦の状態に合わせておっぱいのケアをしたり、授乳のレクチャーをしたりもする。産後2日目には沐浴(赤ちゃんのお風呂)の仕方をレクチャー、3日目には実際に産婦の手により沐浴を体験させるなど。そうこうしているうちに入院期間はもう後半。産婦は、まだまだ出血も多く、後陣痛が続いているケースもあるかもしれないが、そんな状態でも、時には痛み止めを投与しながら子育てをスタートさせる。そのことで脳から身体に「もう出産は終わり、次は子育てですよ!」という信号が送られ、子宮復古(子宮が妊娠前の状態に戻っていくこと)が促されるのである。この点は主な病時入院との大きな違いになるだろう。

前半はたびたび悪露のチェックタイムがやってくる

産後数ヶ月もするとすっかり忘れてしまうかもしれないが、産後入院中はまだまだ悪露が激しく出ている時期。出産前は想像さえもしなかった量の出血をトイレのたびに目の当たりのすることになる。また、産後0日目から2日目くらいまでの間は一定時間おきに看護師によって悪露チェックが行われる。スムーズにチェックをしてもらえるよう、産褥ショーツを着用しておくのが望ましい。産褥ショーツは血液で汚れることもあるため、2〜3枚準備しておこう。また、相手が女性でも男性でも寝そべった状態で大股を開くことに抵抗があるかもしれないが、悪露のチェックは安全のために不可欠であり、看護師にとっては大事な業務の一環。余計なことは考えずに、それこそ機械的に淡々と股を開こう、開くのだ!

おっぱいが張って全身が非常事態

妊娠中から徐々に発達してきたおっぱいが、生まれてきた赤ちゃんのために大きさ・張りともにピークを迎えるのがこの頃。しかし、母乳を出すための準備は整っても、出口がうまく開通していなかったり、赤ちゃんが思ったより上手に吸ってくれない場合、おっぱいは非常事態に陥る。ひどい場合、やわらかくて丸みを帯びていたはずのおっぱいが、カッチカチの四角い謎の物体に変化してしまうことも。一度マックスまで張ってしまうとちょっと触れるだけでも激痛が走るので、解消のためにマッサージでほぐしたり、絞って出したりする行為自体が絶叫ものである。場合によっては両腕が痛くて上がらなくなったり、赤ちゃんの抱っこもできなくなったり、ベッドで寝たり起きたりする動作もしんどくなったりするので、看護師に相談して助けてもらうようにしよう。冷湿布をくださいとお願いしてみるのもアリ。

「3食プラス、ティータイム」気づけば食べてばっかり!?

産後入院では、掃除や洗濯、食事の支度などの家事はせず、外出もしないので、普通に過ごしていれば、ほぼ確実に運動不足になるはず。……にもかかわらず、朝食・昼食・おやつ・夕食……と、しっかりと食事が提供される。まさに上げ膳据え膳状態で、動かざるして食べてばっかり! 妊娠中に「体重を増やしすぎちゃダメですよ〜」「1日1時間は歩きましょう」なんて注意されていると、食べてばっかりの日々が恐怖に感じられてしまうかもしれないね。きのこの知り合いに、事情があって産後入院が長引いた人がいたのだけど、病院のベッドからブログを更新して「この食べてばっかりの生活、マジでヤバい……さっき食事したのに、また次の食事だ……全部食べるの怖い。食べるけど!」と恐れおののいていたよ。でも、提供される食事はしっかりと栄養管理されているから、そこまで心配しなくても大丈夫。プラスして差し入れのお菓子を夜中に平らげてしまっていたきのこも、退院の頃には妊娠前の体重に戻ったから(←サバ読んでいる)!

赤ちゃんが意外と目を開けない

これはかなり個人差がある「あるある」だけども、生まれて数日間、あまり目を開けない赤ちゃんは身の回りにも何人かいらっしゃった。そして、「生まれた日は1秒も目を開けず、生まれた翌日にも同じで、翌々日に2秒くらい目を開ける程度の赤ちゃんがいる」というのは、きのこの10年前の「新生児(自分の子)にまつわる大発見」でもあった。なかなか目を開けないもんだから、目を開けたときになんとか写真を撮ろうと躍起になっていた数日間。当時は、「赤ちゃん生まれました」とお目々ぱっちりの赤ちゃんの顔の写真を送ってくれていた友人のことを思い出し、じつはその1枚を撮るのにめちゃくちゃ苦労したんじゃないだろうか……などと同情したりもしていたが、みんながみんな目を開けないわけじゃないのよね。一発で撮れていたかもしれないね。我ながら身勝手なシンパシー発揮してたよな。

家族や知り合いが訪ねてくることは、その日の一大イベント

入院中に接触があるのは、第一に自分の子(赤ちゃん)、そして、医師や看護師、すれ違う程度であれば、同時期に入院している人だけである。それ以外の人間には滅多に会わないので、誰かがちょっとでも面会に来てくれることがあれば、なかなか嬉しかったりするものだ。しかし、基本的には外出しない生活で、ろくにメークもしないし、ヘアスタイルも機能優先でテキトーにまとめた感じだし、服装もゆったりとしていて必要ならすぐにおっぱいポロンと出せるような格好だし……。自分の親や姉妹ならまだしも、義理の両親や職場関係の人などが訪ねてくるとなると、ちょっとした準備が必要なのだ。とりあえず「恥ずかしくない & 失礼ではない程度」に身だしなみを整え、来てくださる時間を空けられるように授乳時間や自分の食事などを調整する。時間帯によっては1日がかりでその調整に入る場合もある。こうなると誰かの訪問は一大イベントだ。でもこれはすごく嬉しいし、入院中の良い刺激になるので、適度に身近な人には「ぜひちょっとでも来てね」と伝えてみよう。

粉ミルクや紙おむつなどのメーカーから説明を兼ねて営業をする人がやってくる

これも地域や施設によってさまざまではあるが、都内の個人クリニックでは、少なくとも多い “ あるある ” だ。粉ミルクや紙おむつなどのメーカーの人の立場になってみると合点が行くのだけれども、ママたちが出産したところでオススメされた商品を退院後もそのままリピートして使うということはよくあって、そこをしっかりと掴み取りたいわけだよね。なので、産後入院中のママたちにいろいろ教えてあげるよ! という体裁で自社の商品を使ってプレゼンしたり、相談に乗ったりしてくれるというわけだ。営業といっても、強引に高額な商品の購入を約束させられたりすることはないはずなので(そんなことがあれば問題!)、悩みがあれば素直に相談し、「いい!」と感じたらその商品を退院後も使い、そうでなければゆるやかに話を流せばよいのではないかなと思う。

24時間母子同室だと、いきなり睡眠不足

産後入院中は、病院や施設によって、「24時間母子同室」としているケースと、「昼間のみ母子同室」としているケースがある(どちらも母子ともに疾患がない場合)。想像にたやすいところだが、24時間母子同室の場合、昼と夜の区別がまだつかない新生児とずっといっしょにいてお世話をするので、産後間もないのにいきなり睡眠不足になることも。赤ちゃんのそばにいることで、赤ちゃんが欲しがるペースで母乳をあげられるし、「産んだんだ」ということをよりいっそう自覚できて子宮の回復が早まるというメリットもあるようだが、産後は重傷を負ったケガ人と同様。あまりにしんどいときは医師や看護師に相談し、一時的にでもしっかり睡眠をとらせてもらうようにしよう。退院してからはそうもいかず、もっと頼れなくなるわけだから。

夜間母子別室だと、赤ちゃんに会いたくて寂しい

一方で、「昼間のみ母子同室」の場合、夜、決められた時間になると自分の赤ちゃんをあずけなくてはならなくなる。そこから夜をひとりで過ごし、朝、また決められた時間になると赤ちゃんがそばに届けられる、その繰り返しだ。身体も弱ってるし、いろいろとやらなくてはならないこともあるし……で、なかなか大変な入院期間ではあるけれど、夜をひとりで過ごすとなると、途端にさみしくなり、朝が来るまでの時間がすごく長く感じられたりする。たとえば翌朝、12時間ぶりに赤ちゃんが届けられると、「おはようございます。本日もどうぞよろしくお願いします」などと、自分の赤ちゃんなのにうっかりかしこまってお客さま対応してしまうなんてことも。

後半になると早く家に帰りたくてしかたなくなる

不思議なもので、掃除も洗濯も食事の支度もやらねばならず、大変なこともあるけれど、それでもホームシックにかかるものである。家事をおあずけにして何日も家に帰らないというのも、そろそろ不安になってくるし、ね! やっぱり暮らし慣れた自分の家がいちばん落ち着く。でも、そんなふうに家が恋しくなる余裕が出てきたということは、産後の経過が順調な証拠。帰りたいと伝えても帰らせてもらえるわけではないけれど、看護師さんに「そろそろ家が恋しくなってきちゃった」って伝えるのは、ある意味、安心材料の提供になっていいかも。核家族の場合は、家に帰ると入院中のように何かあるたびに相談できる相手がいるわけではないので、入院期間のうちに心配のタネは全部相談してつぶしておこう。

***

ずいぶん前を振り返って思うのは、初めての産後入院期間って、ママの新人研修期間みたいなものだったなぁ……ということ。
近所に身内が住んでいない限り、子育てが孤独になりがちな現代。
赤ちゃんのお世話や母体の回復のためのケアだけじゃなく、育児のスキルやノウハウを身につけるサポートをしてくれたり、相談に乗ってくれたりする医師や看護師の存在は本当にありがたかったなぁ……と。
せっかくの入院期間だもの。退院したら、赤ちゃんの1ヶ月健診を最後にほとんど会うこともなくなってしまう彼ら・彼女らに、新人ママとしてほどよく頼ってみてもいいと思うよ。

文:松本えつを

▼松本えつをの子育てあるある▼

◆ 文・ストーリー構成:松本えつを(役名:きのこ)

絵本作家・エッセイスト・コピーライター。2007年、8年間役員をつとめた出版社から独立。2008年、出産後の出血多量で死にかけるも一命をとりとめたことをきっかけに、女性が働きづらい社会を少しでも変えたいと一念発起。以降、ニッポンの女性アーティスト・クリエイターの自立支援を目的とした教育&プラットフォーム事業を立ち上げ、多くの女性たちの声を聞く。2014年、クリエイターを対象としたマンガコンテンツ “ クリエイターあるある in 日影工房 ” を企画・制作。これまでの著書の大部分は大人の女性を対象としたものとなる。代表作に『バンザイ』(サンクチュアリ出版)、『ユメカナバイブル』(ミライカナイ)等。

クリエイターあるある in 日影工房
ウーマンクリエイターズカレッジ「絵本の学校」

◆ 絵:ささはらけいこ(役名:もじゃ)

1984年北海道生まれ。金沢美術工芸大学油画専攻卒。東京クリエイターアカデミー(現ウーマンクリエイターズカレッジ)を経て、2010年よりイラストレーター・絵本作家として活動を始める。2014年から “ クリエイターあるある in 日影工房 ” の作画を担当し、「もじゃ」役として出演。2015年におまんじゅうのような子どもを出産し、テンヤワンヤで子育て真っ最中。
ささはらけいこポートフォリオサイト「星ふるモジャモジャの丘」

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