すみかる住生活版

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【マンガ】無事に出産できても気は抜けない……出産はゴールではなくスタート! “ 出産直後あるある ” 10選【松本えつをの子育てあるあるvol.38】

会陰の縫合のときの麻酔がなにげに超痛い

「陣痛や分娩の瞬間が痛いというのは知っていたけれど、そのあとの会陰の縫合でここまで痛い想いをするなんて聞いてないよ〜!」という “あるある”。陣痛に耐えている間や分娩の瞬間は「赤ちゃんを産む」という使命感に満ち、それ相応のアドレナリンが出ているもの。激痛を感じる機能も自然と麻痺しているかもしれないね。また、縫合前の麻酔の痛みは子宮収縮の「痺れる系」の痛みではなく注射針を刺す「尖り系」の痛み。痛みのタイプもぜんぜん違うわけだ。中には「縫う痛みは陣痛や分娩の痛みに比べたら大したことないから麻酔なしでいきますよ!」なんてこともあるという噂も。落ち着いて考えればとんでもない話だ……。

とにかく想像以上に出血している

「経験するまでは、もっと美しく、もっと平和でしあわせなことだと思っていたのに、実際に出産してみると、とにかく想像していた以上に “血だらけ” だということに驚く」という “あるある”。そもそも出産とは「一度に大量の血液を失う」ということなのだ。多くの場合、分娩とほぼ同時にけっこうな量の出血(200ml〜500ml程度)があり、「後産(あとざん)」という子宮内の残留物を外に出す工程でも出血(200ml〜400ml程度)し、その後の産褥期でも1ヶ月近くにわたり「悪露」としての出血が続く。妊娠後期になると母胎の血液量は通常の1.4倍に増えるということに以前触れたけれど、それはつまり、出産では、増量でもしていなかったら乗り越えられないほどの出血があるということだ。

貧血でフラフラして自力では歩けない

前述の通り、出産では、非妊娠時の状態だったら死んでしまうレベルで出血することもよくある。ただ、血液量が1.4倍になっているので命は繋げやすいコンディションになっているのだ。それでも出血は出血。貧血状態になって自力で歩けなくなることも珍しくない。出産直後は一定時間おきに子宮の戻り具合や悪露や弛緩出血(子宮がゆるむことによる出血)の様子を見るために看護師が巡回することと思うが、その際に異常が見られると急いで医師の診察に回される。弛緩出血が多い場合は子宮収縮剤などを投与・増量するなどの処置がなされる。お腹が大きくて歩きづらかった妊娠後期に「産んだらスッキリして楽に歩けるようになるから、もうちょっとの辛抱」って思っていたけど、ぜんぜんそんなことなかったね!

骨盤がゆがんで靭帯がゆるみ、腰に激痛が走る

分娩が終わって、分娩台から降りる際や、産後の内診で移動するときに助産師や看護師が支えてくれるのは、産婦がひとりで歩くのが困難であることが多いから。出血により貧血になっているという理由以外にも理由はある。そのひとつが腰痛だ。経腟分娩の場合、分娩時には子宮口が全開(約10cm)になり、そこを赤ちゃんが通って出てくる。当然、骨盤だってありえない幅に広がるし、骨盤を支える靭帯や周辺の筋肉にも負荷がかかるわけだ……。そんな状態のまま普段通りに動こうとしても無理な話。骨盤のゆがみや靭帯のゆるみはその後、時間をかけて元に戻っていこうとするため、産後しばらくは腰痛に悩まされることも多い。

自分で排尿できない

出産直後は、トイレに移動することも、ひとりで用を足すことも簡単ではない。貧血や腰痛の症状に加え、分娩とそれに伴う会陰の損傷などで股間に傷がついている状態だからだ。……というわけで、最初の数時間は看護師さんにカテーテルを尿道に挿してもらい、尿を他力本願で出すことが多い。また、自力でトイレに行けるようになっても、普段通りに排尿して、普段通りにトイレットペーパーで拭くというわけにはいかない。まだまだ出血中の身である。そして、会陰を縫合していれば、そこは術後の患部そのものである。静かに排尿し、その後、滅菌済みのウエットコットンなどでやさしく押さえるようにしてキレイにするのがお約束。トイレひとつとってもこんなに大変になるなんて、物心ついて以来、初めてではないだろうか。

普通に座ることさえできない

尿道に挿さっている管が取れたとしても、股間の痛みはまだまだ続く。分娩時に会陰が大きく裂けていたり、何針も縫合していたりすると、普通に座ることさえできない。まさに今こそ「あ、痔のときに使うクッションがある」なんて思っていたドーナツ型のそれの出番である。ひしひしと感じる存在意義の重さときたら……。

後陣痛(こうじんつう)ナメてた……

後陣痛は、大きくなった子宮が、出産後にものすごいエネルギーをもって収縮し、元の大きさに戻ろうとする際に起きる痛み。陣痛は陣痛でも、赤ちゃんを産む前の陣痛と違うのは「産むぞ!」という意味でのアドレナリンが出ていないこと。人によってはこれがめちゃくちゃ痛い。痛いんだけれど、きちんと収縮できないと母体の命にも関わるので、ありがたく受け止めよう。

お腹が元に戻っていない

産む前はなんとなく「赤ちゃんが出たら、次の瞬間からお腹はぺったんこになる」というイメージでいたけれど、ぜんぜんそんなふうになっていない! という “あるある”。かなり多くの産婦さんが、産後すぐにお腹を見て驚きと動揺を隠せずにいるようだ。考えてみればおよそ10ヶ月もかかって少しずつ大きくなったお腹が一瞬にして元のサイズに戻るわけがない。通常、産後すぐは妊娠5〜6ヶ月くらいのお腹の出方で、およそ1ヶ月くらいかけて元の大きさに戻っていくらしい。落ち込まず、焦らず、現実を受け入れよう。なお、お産入院用のパジャマは、主に産後に着用するとはいえ、ゆったりしたものにしておくべきである。退院時の服も入院時と同じマタニティウェアのつもりでいてOK。

突発的に寒気がしてガクガクブルブルと震える

「悪寒戦慄」という言葉をご存知だろうか。ホルモンバランスが崩れ、自律神経が乱れることにより、体温調節が効かなくなり、突発的に強烈な寒気に襲われることを意味する。更年期障害の症状のひとつとしても有名だが、これが産褥期のホルモンバランスの変化によって起こることもある。悪寒戦慄は文字面こそは恐ろしいが、そこまで身体に有害なものではないので深刻に悩みすぎないこと。ただし、寒気だけでなく、38℃以上の発熱や身体の痛み、悪露や尿の異常などが見られる場合は医師や看護師にすぐに伝えよう。

産んだ瞬間から、ちょっとの時間差をもって、じんわり涙が出てくる

生命の神秘を目の当たりにし、「無事に産めた……」「赤ちゃんもわたしも生きてる……」「赤ちゃんもわたしもがんばった……」「本当によくやった……(T ^ T)」などと、分娩の渦中では出てこなかったような言葉が、部屋に戻ってひと眠りして起きたあとなど、落ち着いた頃にじわじわ込み上げてくる。「自分で自分のことを褒めるなんて、生まれて初めて」という人もいっぱいいるんじゃないかな。

***

出産とは「大仕事」と言われるが、もっと言い換えると「大怪我」であり、「重体」とも言える。そのくらい、母体の損傷は想像のはるか上を行っているのである。

……にも関わらず、出産後すぐに関係各者に個別に連絡をしたり、SNSを自力で更新したりする人が多く見られるが、もうちょっと客観的に自分が置かれている緊急事態を自覚するべきかもしれないね。

そして、そんな状況の元、引き続き頑張って生き、育てていこうとする自分自身を、もっともっと褒めてほしい。もちろん、パートナーにもいっぱい褒めてもらおう。「本当によく頑張ったよね!」と。

文:松本えつを

▼松本えつをの子育てあるある▼

◆ 文・ストーリー構成:松本えつを(役名:きのこ)

絵本作家・エッセイスト・コピーライター。2007年、8年間役員をつとめた出版社から独立。2008年、出産後の出血多量で死にかけるも一命をとりとめたことをきっかけに、女性が働きづらい社会を少しでも変えたいと一念発起。以降、ニッポンの女性アーティスト・クリエイターの自立支援を目的とした教育&プラットフォーム事業を立ち上げ、多くの女性たちの声を聞く。2014年、クリエイターを対象としたマンガコンテンツ “ クリエイターあるある in 日影工房 ” を企画・制作。これまでの著書の大部分は大人の女性を対象としたものとなる。代表作に『バンザイ』(サンクチュアリ出版)、『ユメカナバイブル』(ミライカナイ)等。

クリエイターあるある in 日影工房
ウーマンクリエイターズカレッジ「絵本の学校」

◆ 絵:ささはらけいこ(役名:もじゃ)

1984年北海道生まれ。金沢美術工芸大学油画専攻卒。東京クリエイターアカデミー(現ウーマンクリエイターズカレッジ)を経て、2010年よりイラストレーター・絵本作家として活動を始める。2014年から “ クリエイターあるある in 日影工房 ” の作画を担当し、「もじゃ」役として出演。2015年におまんじゅうのような子どもを出産し、テンヤワンヤで子育て真っ最中。
ささはらけいこポートフォリオサイト「星ふるモジャモジャの丘」

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