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【マンガ】いざ陣痛!「こんなときに限って……」ユッキー夫妻にみる “ 出産(前半戦)あるある ” 10選【松本えつをの子育てあるあるvol.36】

陣痛は「今か今か」というときではなく、あきらめた頃にやってくる

探し物が「探すのをやめたときに見つかる」のと同じで、陣痛も「そろそろ今日あたり来るかも」なんて思っている矢先には来ないことが多い。「この分じゃ、予定日を大幅に超過するかもね! ま、ゆったり構えるか!」なんて思った当日に産気づく、というのはよくある話。リラックスの効果なのか。

陣痛から分娩までのタイミングが夕方から朝までの間

一説によると、羊水はその成分が海水に似ていて、潮の満ち引き同様、月の引力に影響されるという。満月や新月の界隈(特に夜)にはお産が増えるってうわさの根拠もそういうことらしい。また、別のとある説では、大昔の人間が持っていた「外敵から身を守るために出産を夜のうちに済ませておく」という性質の名残が今でも見られるからだとか。

(産婦人科に)切羽詰まって電話しても、必死で駆けつけても、看護師や医師はポーカーフェイス

陣痛が来たことを伝える電話をかけるのは、誰でも「陣痛の波が引いているタイミング」だろう。つまり、電話するほうもある程度はポーカーフェイスならぬポーカーボイスなはず。その伝え方があまりに冷静だと「すぐ来てください」ではなく「念のため来てください」くらいのトーンで返されることも。また、必死で駆けつけたあとも看護師や医師がやっぱりポーカーフェイスなのは「妊婦を不安にさせないためのはからいがあるから」ということに加えて、「プロだから」ということに尽きるだろう。

「いざ陣痛!」というときに限って、普段よりタクシーがつかまりづらい or 到着が遅い

これは、実際にはそうじゃないとしても「あまりに気が急いてるうえに不安なため、そう感じてしまう」ということなんじゃないかな。ちなみに、陣痛でタクシーを呼ぶときは道路脇で拾おうと荷物を抱えて出歩こうとせず、迎車を依頼して自宅で待つようにしよう。

「いざ陣痛!」というときに限って、パートナーがしょうもない理由で不在

妊婦同様、パートナーも「今か今か」と思ってそのときを待つ。しかし、けっきょく陣痛が来ず、気がゆるんで飲み会の予定なんぞを入れてしまうものである。そしてまさに飲み会が行われている最中に「いざというとき」が来るものだ。当然そのとき、多くの場合はアルコールが入っている。ゆえに状況把握能力は低く、妊婦は「陣痛が来た」という旨のセリフを電話口で2度繰り返す。

病院に着いたら間もなく生まれるものだと思っていたら「子宮口2センチくらい」とか言われて愕然とする

特に初産の場合は、陣痛の始まりから子宮口全開までに12〜15時間程度と長い時間がかかる(経産婦は5〜8時間程度といわれている)。そして、初産の妊婦はそれまでに出産経験がないため、脳内イメージでは「病院に着いたらすぐに分娩台に乗るもの」と思っていたりする。しかし実際は、「内診」からの「NST」からの「陣痛に耐える時間」からの「子宮口全開間近!」からの、やっとのことで「分娩台」だ。その道のりは得てして長い。

陣痛の波が来ているときのトリップしているような感覚に、もうどうしていいかわからなくなる

陣痛の波が来ているときの痛みにはさまざまな表現があるが、きのこの経験的には「トリップしている感覚」という表現がいちばん近い。そしてそのたぐいの痛みは「じっと堪えればよい」というものではなく、「宇宙船(※比喩です)の揺れに合わせて身体を捻ったり捩ったりしながら対応していかなくてはならないもの」であり、途中からは対応の仕方がわからなくなり「もしかして自分はこのまま死ぬのではないか?」とさえ思ってしまうものである。

だんだんパートナーが不憫に思えてきてとりあえずテニスボールあててもらうように頼むが、それで痛みが楽になることはほとんどない

妊婦本人でさえ、どうしていいかもわからない状況だ。パートナーはなおのこと、なすすべもない状態になるだろう。……にもかかわらず、とにかく力になろうと、「がんばれー」と声をかけたり、背中をさすったりしてくれる姿は、陣痛の波が引いているときの妊婦からすると不憫でならない。そこで、「テニスボールを腰にあてて」と、せめてもの役割を与えることでパートナーに存在価値を発揮してもらおうとする妊婦(優しい!)。しかし、哀しきかな、そうしてもらうことで痛みが楽になることはほとんどない。

陣痛の間じゅう、パートナーもけっきょく何をしていいかわからず、いずれ「何か買い出しに行こうか?」などと言い出す

テニスボールをあてても痛みを軽減することができない、すなわち「自分は役に立てない」とわかったパートナーは、いよいよ耐えきれなくなって「何か(食べ物とか飲み物とか)買い出しに行こうか?」などと言い出す。だが、もうこのステージでは何を提案してもおおむねスルーされる。「とりあえず今はそれどころじゃないから。……っていうか、そもそも買い出しに行っている間に生まれたらどうするんだよ!」くらいには思ってるが、それらを言葉にする余裕はもちろんない。

陣痛の最中にパートナーが少しでも小馬鹿にしたような発言をするとキレたくなる……というか、キレる → フルボッコ

正面切って役に立とうとしても立てないという事実を突きつけられたパートナーは、次に「ならば、笑わせてあげることで少しでも楽に……」などと考え、自虐ネタや(相手の)いじりネタを披露しだしたりする。しかし、多くの場合、狙いは外れるどころか裏目に出て、最終的にはボッコボコのフルボッコにされる。陣痛の最中はどんなネタを出されても笑えないものだと心得るべし、べし。

***

これまで多くの「立ち会い出産エピソード」を聞いてきたが、8割以上の確率で「旦那さんがいてくれたけど、具体的に役に立ったポイントはない」とのことだった。

しかし、どうか安心してほしい。
なぜなら、それは換言すると「(その場に)いてくれるだけでじゅうぶん」ということでもあるのだから。

次回こそは、生まれるのか?
がんばれ、ユッキー!

文:松本えつを

▼松本えつをの子育てあるある▼

◆ 文・ストーリー構成:松本えつを(役名:きのこ)

絵本作家・エッセイスト・コピーライター。2007年、8年間役員をつとめた出版社から独立。2008年、出産後の出血多量で死にかけるも一命をとりとめたことをきっかけに、女性が働きづらい社会を少しでも変えたいと一念発起。以降、ニッポンの女性アーティスト・クリエイターの自立支援を目的とした教育&プラットフォーム事業を立ち上げ、多くの女性たちの声を聞く。2014年、クリエイターを対象としたマンガコンテンツ “ クリエイターあるある in 日影工房 ” を企画・制作。これまでの著書の大部分は大人の女性を対象としたものとなる。代表作に『バンザイ』(サンクチュアリ出版)、『ユメカナバイブル』(ミライカナイ)等。

クリエイターあるある in 日影工房
ウーマンクリエイターズカレッジ「絵本の学校」

◆ 絵:ささはらけいこ(役名:もじゃ)

1984年北海道生まれ。金沢美術工芸大学油画専攻卒。東京クリエイターアカデミー(現ウーマンクリエイターズカレッジ)を経て、2010年よりイラストレーター・絵本作家として活動を始める。2014年から “ クリエイターあるある in 日影工房 ” の作画を担当し、「もじゃ」役として出演。2015年におまんじゅうのような子どもを出産し、テンヤワンヤで子育て真っ最中。
ささはらけいこポートフォリオサイト「星ふるモジャモジャの丘」

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