すみかる住生活版

メニューを開く メニューを閉じる

【マンガ】男の子が欲しい? 女の子が欲しい? 赤ちゃん産み分けについての現代版考察【松本えつをの子育てあるあるvol.20】

この連載は、かつて、クリエイターならではの切なさや怒りの感情をマンガで表現し、多くの共感を呼んだ “ クリエイターあるある in 日影工房 ” のスピンオフ企画。日影工房の主要メンバーであり、「仕事の機会を奪われがちな女性をサポートしたい!」という想いから生まれたウーマンクリエイターズカレッジの創設者でもある松本えつを(役名:きのこ)さんが自身の出産体験を元に、ニッポン人女性の視点から妊娠・出産・育児にまつわる「あるある」をお届けします。(いえーる すみかる編集部)

> 松本えつをの子育てあるある 他の記事はこちら

今回は、赤ちゃんの性別についてのお話だよ。

さて、妊娠したことが確定してしばらくすると、妊婦本人も、そのパートナーも、周辺の人々も「男の子? 女の子? どっちだろう」ということに興味が向いたりするものだよね。

生まれてくる子どもの性別が、男の子か、女の子か。
それぞれの人気は、時代によっても違うだろうし、第一子なのか第二子なのか、上の子がどっちなのかなどによっても違うだろうけれど、最近、身の回りでは「女の子人気」が少しだけ高いように感じるよ(個人の感想ですよ!)。

性別は何によって、いつ決まるの?

ところで、全人類の男女比は、ほぼ50%ずつらしい。
しかし、そもそも性別は、何によって決まるんだろう。

「性別は何によって決まるの?」
……と訊ねると、模範解答は「染色体」ということになるんだけど、……その「染色体」ってやつ、肉眼で見たことあります?

染色体って言葉は何度も聞いたことがあるけれど、実物を見たことがある人はめったにいないんじゃないかな。
「……っていうか、染色体ってどこにあってどんな形してるの?」という程度の理解の人が多いように思う。

染色体は、どうやら卵子や精子の中に存在しているらしいが、きのこは染色体そのものの実物を見たことないし、液体なのか個体なのかの理解も怪しく……、見たこともないようなものについて知ったように話すのは気が引けるので、もう少しわかりやすい次元で話そうと思う。

染色体はさておき、ズバリ、性別がどっちになるかを司っているのは「精子」なんだってよ!

わかりやすい言い方をすると、精子には「男の子の素」を持つものと「女の子の素」を持つものの2種類があって、そのどっちが卵子と結びつくかによって性別が決まるということ。

つまり、「卵子と精子が出会ったときに性別が決定する」ということがいえるよね。ずいぶん早い段階で決まるんだ!

きのこは、これを知るまで、「卵(卵子)を作り出して、それを胎内で約10ヶ月間も育み、産んでからもさらにほとんどつきっきりで育てていく女性の強さってやっぱ半端ないわぁ! 無敵だわぁ!」と感心していたのだけれど、人々の関心を強く引く「性別」を決定づける特権を持つのは精子のほうだったなんて……、何というか、オトコという性に不意にアッパーを食らったような感じになったものです。

代表的な男女の産み分け方法

「卵子と精子が出会ったときに、精子が男の子の素か女の子の素かによって、性別が決定する」という事情を受けて、世の中にはいろいろな「男女の産み分け法」が出現してきた。

もっとも代表的だと思われるものは、排卵日を基準として「前もって」「当日に」など、セックスのタイミングを図って産み分ける方法。
これは、「男の子の素」となる精子の寿命が短いという特性や「女の子の素」となる精子の寿命が長いという特性を踏まえたものだ。
あわせて、それぞれの精子が、酸性・アルカリ性のどちらに強いかという点も考慮し、セックスの仕方を工夫すると成功率が上がるとのこと!

「タイミングを図ることなら簡単そう!」と思われるかもしれないが、そもそもしっかりと基礎体温をつけて排卵日を特定しないとタイミングは図れないし、タイミングを図ることによって、その前後には「したくてもしない」わけだから、チャンスの回数も減り、妊娠自体の成功確率が下がるというリスクもある。

また、本気を出すなら、専門の機関に依頼して、人工授精の技術を応用した「パーコール法」という産み分け法を試すという選択肢もある。
予算も5万円程度(※1回にかかる予算)と、手が届かなくもない範囲。

ただ、これも、精子をふるいにかけて希望の性別の素を持つ精子のみを子宮に注入するので、精子の種類と絶対量が減り、妊娠確率は下がる。

ほかにも、ゼリーで膣内の酸性・アルカリ性をコントロールすることで、希望の性別の素を持った精子を受け入れやすくする方法や、普段からサプリなどを摂取して希望の性別の素が卵子に到達しやすいような環境を作ってあげる方法などがある。

……産み分け法と呼ばれるものはさまざまあるわけだが、一説によると、産み分けが成功する確率は、自己流のあらゆる手段を片っぱしから試すくらい気合いを入れても、60〜70%がせいぜいだとか。

60〜70%の成功率か。まぁ、悪くないのでは? とも思うかもしれないが、……ん? ちょっと待って?
男女の二択で片方が生まれる確率は何もしなくても50%なのだから、自己流でできることを全部試してそのくらいの成功率って、そこまで高いわけじゃないんじゃない? ……と、きのこは思うのだが、その確率を高いと思うか低いと思うかは試した人それぞれの感覚次第ですからね……。

持論!「産み分けに費やす極度の労力はムダ」その理由は……

ここからは「きのこの持論」として記すので、あくまで個人的見解の域を出ないものとしてライトに受け止めてほしい。

産み分けを希望する人はきっと後を絶たないし、自分自身も「女の子が欲しいな……」と思った時期はあるが、今の時代の特性を考えると、結果的に……

男女の産み分けに関していろいろ言われているけれど、産み分けに極度の労力を費やすときは、それがすべてムダになることも覚悟すべし!

と思っている。

産み分けのサポートを生業とされている方には、本当に申し訳ない持論です(陳謝)。

そう思う理由は3つ。けっこうシンプルだ。

◆ 理由1
自己流の産み分け法には100%確実なものはないうえに、それぞれ「妊娠率が下がる」などのリスクが伴う。ゆえに、うまくいかなかったときのダメージを夫婦ともに受け入れられる範囲の中だけで試すべき。
◆ 理由2
産み分けが成功してもしなくても「男女どちらでも同じくらい自分の子はかわいい。必死に産み分けようとしなくてもよかったかも……」と、生まれたあとに気づくことが多い。
◆ 理由3
子どもが大きくなると、性別さえも自分で選択するようになる。そんな時代に、わたしたちは生きている。

……子どもがまだ小さいうちは、ひとりで何もできないのでいろいろなことを親が決めるわけだけど、大きくなったら話は別。自分の人生を自分で決めるようになる。
何を食べるか、どこに住むか、何を学ぶか、どんな仕事をするか、何にお金を使うか、誰と生きるか、などなど。
そして、究極は、「男として生きるか、女として生きるか」さえも、自ら選択していくことに……。

その権利を、親が奪うことはできないのである。

親が願った性別と違う性別を、子が望んだとしたら……。

産み分けに費やした努力がムダになったと感じるどころか、産み分けをした自分を責める結果になるかもしれない。

たとえば、こんなふうに。

「わたしがこの子を身ごもるときに女の子を望んだばっかりに、本当は男の子として生まれるはずだったのに女の子の姿で生まれてしまったのかもしれない。そのことで、この子は何年も苦しんできたのかもしれない……」

いやいや、確率としてはまだまだ多くはないですけれどもね。

 ***

子どもというのは、産むのもそれはそれは大変なことだし、産んだらその後、長い付き合いになるし、せっかくなら、理想の家族像に合った性別を産みたいと思うのは、自然なことなのかもしれない。

しかし、産み分け法を実践するにあたり、それ相応のリスクが伴ううえに、産み分け法を実践したからといって成功するとは限らないということや、少なくとも20年後には子どもが自分自身の人生における主人公かつ責任者になっていくことを忘れないでいたいと思う。

でも、何よりも、男女どっちの赤ちゃんもかわいいし、どっちの子どもも何十年も先まで、いうなれば未来永劫、血の繋がった愛すべき存在であることは間違いないということ。
それがいちばん、忘れたくないことだよね。

文:松本えつを

▼松本えつをの子育てあるある▼

◆ 文・ストーリー構成:松本えつを(役名:きのこ)

絵本作家・エッセイスト・コピーライター。2007年、8年間役員をつとめた出版社から独立。2008年、出産後の出血多量で死にかけるも一命をとりとめたことをきっかけに、女性が働きづらい社会を少しでも変えたいと一念発起。以降、ニッポンの女性アーティスト・クリエイターの自立支援を目的とした教育&プラットフォーム事業を立ち上げ、多くの女性たちの声を聞く。2014年、クリエイターを対象としたマンガコンテンツ “ クリエイターあるある in 日影工房 ” を企画・制作。これまでの著書の大部分は大人の女性を対象としたものとなる。代表作に『バンザイ』(サンクチュアリ出版)、『ユメカナバイブル』(ミライカナイ)等。

クリエイターあるある in 日影工房
ウーマンクリエイターズカレッジ「絵本の学校」

◆ 絵:ささはらけいこ(役名:もじゃ)

1984年北海道生まれ。金沢美術工芸大学油画専攻卒。東京クリエイターアカデミー(現ウーマンクリエイターズカレッジ)を経て、2010年よりイラストレーター・絵本作家として活動を始める。2014年から “ クリエイターあるある in 日影工房 ” の作画を担当し、「もじゃ」役として出演。2015年におまんじゅうのような子どもを出産し、テンヤワンヤで子育て真っ最中。
ささはらけいこポートフォリオサイト「星ふるモジャモジャの丘」

関連記事

CLOSE