妊娠の基本的なステップと化学流産
一般的な妊娠は、次のようなステップを踏んで成立・継続していく。
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[2]受精(精子と卵子が出会う ← これだけでもじゅうぶん奇跡!)
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[3]着床(着床開始でhCGホルモンの分泌が始まり、徐々に濃くなっていく)
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[4]妊娠継続(正常な位置に着床し、胎嚢が確認され、次のステップに進む)
この過程で、何らかの理由により、妊娠継続が難しくなる場合がある。
ウメ子の今回のケースは、おそらく[3]の段階で着床しかけたものの完了しなかった、いわゆる「着床不全」と思われる。
それ以外に、着床が完了したあとの妊娠初期段階で流産することもある。
ウメ子のケースも、それ以外のケースも、「妊娠検査薬で陽性が出たけれども、婦人科で検査してもらったら子宮内の正常な位置に胎嚢が確認できなかった」、「妊娠検査薬で陽性が出たけれども、その後、出血し、再度、妊娠検査薬を試したら陰性だった」というような状況をもって確認されることが多い。
これらのケースを一般的に「化学流産(化学的流産)」と呼ぶ。
着床が完了しない原因も、着床後に胎嚢が確認できない原因もさまざまだが、このように妊娠5〜7週でうまくいかなくなる確率は非常に高く、全流産のうち22〜44%といわれている。
また、そういった初期段階の流産の原因の多くは「(胎児の)染色体の異常」であることがわかっている。
染色体異常の場合、仮にそのまま妊娠を継続しても、胎児は正常に育つことができない。
最初から決まっていた運命のようなもの、やむを得ないものなのである。
母親の故意によるものではないのはもちろんのこと、生活習慣や体調が原因でもないのだから、間違っても母親が自分で自分を責める必要は、ない……まったくない。
仮にこの段階で自分を責めることが正しいとされるなら、極端な話、性交したけれど妊娠しなかったすべてのケースで自分を責める必要が出てきてしまうはず。
「今回も受精しなかった……タイミングを間違えた自分のせいだ。自分は犯罪者だ」と。
でも、そんな人はあまりいないよね?
妊娠検査薬が今ほど知られていなかった頃は?
この「化学流産」の判明件数は、近年、どんどん増えてきている。
その理由は何か。
話を最初の項に戻そう。
現在は、妊娠検査薬が気軽で正確であることが広く認知されている。
それにより、当然ながらユーザー数も増えているのだ。
「化学流産」が判明することが多くなってきた原因は何よりもそこにあるだろう。
つまり、妊娠検査薬の存在の認知により、かつてに比べて何倍もの人が「化学流産が起きていた」ということに気づくようになったからである。
妊娠検査薬が今ほど知られていなかった頃と比べるとわかりやすい。
予定日になっても生理が来ない。
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予定日を1週間ほど過ぎても生理が来ない。
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あともうちょっと待ってみよう。
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出血した。なんだ! 生理が遅れていただけか……。
予定日になっても生理が来ない。
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予定日を1週間ほど過ぎても生理が来ない。
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よし、妊娠検査薬で調べよう。陽性反応だ! 妊娠だ!(喜)
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出血した。どうしよう、……流産かも。
身体の状況が同じでも、そこに対してどう動くかによって捉え方が変わり、どう捉えるかによって、深刻度が変わる。
たしかに手軽に情報が得られる便利な世の中になったけれども、得られる情報がリアルタイムで細かすぎるあまり、一喜一憂は激しくなり、それに振り回された形で受けるダメージは大きくなる。
なんだかフクザツな気持ちだな……。
「自己収拾した不完全で細かい情報にいちいち振り回されてはいないだろうか?」
そんなことを自問自答してみる。