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【マンガ】妊婦受け入れ拒否について想ふ。見出すべき「解」とはいったい何?【松本えつをの子育てあるある vol.1】

第1位「経済的理由」の背景には何がある?

ひとことで「経済的理由」と言ってしまうと、「医療費も払えないくらい(保険にも加入していないくらい)ジリ貧だったのかよ!」と思う人もいるかもしれないが、何を隠そう(?)、妊婦健診には原則として保険は適用されないのである。だから、病気にかかっても医者に診てもらえないという話とはワケが違うのだ。

さらに、現在では各市町村から補助チケットなるものが発行されるため、妊婦健診の負担は減ってきているが、10年前に至っては、14回中2回分の補助しか受けられなかった(市町村によって異なる)。

このあたりのお話は、次回お伝えしようと思うので、これ以上は割愛するけれども、とにかく、妊娠・出産はお金がかかるうえに、国や地方自治体からの補助は思いのほか薄いと言える。

第2位「無知」のうち、「どうしたらいいかわからない」の背景は?

「無知」にも、純粋に知識が欠如しているケースと、未婚や、パートナーの逃亡(!)や、父親が誰か不明、若年すぎるなどの特殊な状況下に置かれているがために、ひとりでは判断がつかないというケースがあるんじゃないかな、と思う。

そのような特殊な事情の場合は、解決方法も限りなくケースバイケースになるんだろうけど、純粋な知識の欠如であれば、妊娠の可能性がある女性たちの意識の改革と、それをサポートする仕組みをもっと充実させることで、大幅に改善できるはずだ。

たとえば、「妊娠したらどこに行けばいいか」がわからなければ当然、「出産一時金」の存在も知らないだろう。つまり、知識をちゃんと得ていれば、第1位の「経済的理由」による未受診妊婦の数の改善にもつながる可能性があると言えるのではないだろうか。

第1位と第2位の原因を解消できたら未受診妊婦が半減する可能性も

上記の「経済的理由」(33%)と「無知」(21%)を合わせると、54%になる。そのたったふたつの理由で過半数なのだ。それはつまり、仮にふたつの原因を解消できたら未受診妊婦の数が半減する可能性があることを示している。

とはいえ! お金の問題は社会システムに大きくかかわりがあるため、一個人が叫んだところで簡単には改善されないだろうし、無知である状況を防ぐためにも大掛かりな情報網の改革が必要。「これが原因だから、じゃあ明日からこうしよう!」というように簡単にはいかないのだ。

でも、だからといって、誰もが人任せでいたら、それこそ絶望しかないはず。

「ひとりひとりに何ができるのだろうか」ということを、今一度、男女関わらずすべての大人が考えてほしい。

「誰の責任?」ではなく、ひとりでも多くの人が意識を変えていくこと

冒頭の論点に戻るけれど、何か問題が起きると、ありがちなのは、「誰の責任?」という議論。その責任の所在がどこにあるのかを追及することに躍起になってしまうこと。それが、ニッポン人という国民性からなのか、それとも人間とはそういうものなのかはわからない。

責任の所在を明確にすることは確かに必要なことなのだけれども、そこに躍起になるあまり、責任の所在が明確になったところで力尽きて、もっと大事なその先のことを忘れてしまうのはよくない。……というか、まったく意味がない。

単一の立場の人だけが当事者意識を持ち、ほかが他人事だった場合、問題は解決するだろうか? ……いや、絶対に、しないだろう。

大切なのは、これ以上、同じ悲しみを繰り返さないために各人各所が精一杯のことをすること。誰かひとりが何か特定のことをしたら解決するほど、問題の根は浅くない。

文:松本えつを

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◆ 文・ストーリー構成:松本えつを(役名:きのこ)
絵本作家・エッセイスト・コピーライター。2007年、8年間役員をつとめた出版社から独立。2008年、出産後の出血多量で死にかけるも一命をとりとめたことをきっかけに、女性が働きづらい社会を少しでも変えたいと一念発起。以降、ニッポンの女性アーティスト・クリエイターの自立支援を目的とした教育&プラットフォーム事業を立ち上げ、多くの女性たちの声を聞く。2014年、クリエイターを対象としたマンガコンテンツ “ クリエイターあるある in 日影工房 ” を企画・制作。これまでの著書の大部分は大人の女性を対象としたものとなる。代表作に『バンザイ』(サンクチュアリ出版)、『ユメカナバイブル』(ミライカナイブックス)等。

ウーマンクリエイターズカレッジ「絵本の学校」
クリエイターあるある in 日影工房

◆ 絵:ささはらけいこ(役名:もじゃ)

1984年北海道生まれ。金沢美術工芸大学油画専攻卒。東京クリエイターアカデミー(現ウーマンクリエイターズカレッジ)を経て、2010年よりイラストレーター・絵本作家として活動を始める。2014年から “ クリエイターあるある in 日影工房 ” の作画を担当し、「もじゃ」役として出演。2015年におまんじゅうのような子どもを出産し、テンヤワンヤで子育て真っ最中。

ささはらけいこポートフォリオサイト「星ふるモジャモジャの丘」

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